熊谷和徳 TAP SOLO PROJECT 2014『HEAR MY SOLE』 リズムと言葉と空間が創り出すストーリー

今の自分のドキュメントを見せたい

(C)Tokuyama Munetaka

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 今年5月、タップのパフォーマンス・教育・支援の功績を讃える「フローバート」賞を日本人で初めて受賞し、NYのナショナルタップデイのイベント内で表彰された熊谷和徳。過去にはグレゴリー・ハインズ、ジーン・ケリーら錚々たるタップ・ダンサーが受賞している。東日本大震災のチャリティを含め、様々な局面での熊谷の活動が評価されたようだ。
「1996年、19歳でNYに渡った僕が最初に観たタップダンスがナショナルタップデイのイベントだったし、初めて僕がNYでパフォーマンスを行った98年には尊敬するグレゴリー・ハインズが受賞したので、思い入れのある賞です。親しい仲間も同時受賞したので称え合えました。タップカルチャーにとって母のような存在である現ゴスペルシンガーのイヴェット・グローバーも『誇りに思う』と言ってくれました」
 来たる9月、受賞後初の日本公演『HEAR MY SOLE』を行う。SOUL(魂)とSOLE(靴底)を掛けたタイトルは、かつて「Noise & Funk」出演者養成学校の先生が、生徒である熊谷につけたニックネームに由来する。
「黒人同士の呼び方にちなんで“SOLE BROTHA(ソウル・ブラザー)”と呼ばれて。日本人のお前も足で繋がっているんだよという意味でつけてくれたんだと思います。僕自身、足に魂を込めてタップを踏んでいるので、それを皆さんにもっと聴いてほしいという気持ちがあります」
 今回、空間デザインを田根剛、音響や照明などのテクニカル・ディレクションを遠藤豊が担当。企画の発端となったのは、4月に行われたイタリアのデザインの祭典「ミラノ・サローネ」でのパフォーマンスだ。
「『Light is Time』というテーマで田根さんと遠藤さんがインスタレーションを作ったのですが、その中でパフォーマンスを行いながら、何か時空を超えて、宇宙のただなかにいるような感覚をおぼえたんです。宇宙というと壮大ですが、それは自分の内部にも存在するもの。次の公演では、僕が今感じていることを田根さんと遠藤さんに伝え、僕の今を切り取る、ドキュメント的な世界を作ってもらいます」
「パーソナルで内省的」な内容から、「昔を思い出したり自分の感情に気づいたり」と、観客それぞれがストーリーを見出すことができる舞台を目指すという。
「戦争をはじめ色々な問題が起きているけれど、その一つひとつに『賛成/反対』を主張するより、僕が重視したいのは、人の奥にある感情を動かすこと。感情・感受性が硬くなって何も感じられない状態こそが怖いですから。タップを通して僕自身の生き方を見せ、聴いている人・観ている人を揺さぶりたいんです」
 決して難解なメッセージを届けるわけではない。ネイティブ・アメリカンの詩にインスパイアされた熊谷が、この公演のために書いた言葉には「混沌とした世の中」に「美しいとおもえることを表現していく」とある。
「ネガティブな感情からは何も生まれない。僕は今を肯定して先に進みたいんです。だから、劇場全体をタップが鳴る楽器のようにして、お客さんが劇場を出る時には、すごくハッピーになってほしいですね」
取材・文:高橋彩子
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)

9/12(金)19:00、9/13(土)14:00 Bunkamuraオーチャードホール 
問:チケットスペース03-3234-9999
http://www.tbs.co.jp/event/kumagaitap2014