〈歌曲の森〉〜詩と音楽 Gedichte und Musik〜 第25/26/27篇
クリストフ・プレガルディエン(テノール) & ミヒャエル・ゲース(ピアノ) シューベルト三大歌曲

名手が拓く「シューベルト三大歌曲」の新境地

左:ミヒャエル・ゲース 右:クリストフ・プレガルディエン

  「上善如水」と称する美酒があるように、音楽の世界でも、雑味を取り去った歌いぶりは、水流のごとき清らかさを湛えるもの。筆者に「水の浄化」を連想させる歌といえば、まずはクリストフ・プレガルディエンのドイツ・リートになる。オペラの強烈な自己主張に頭がぐらついたとき、この名テノールの歌声に浸り、心の平静を取り戻すのだ。

 禁欲的ながら変な躊躇いはなく、譜面の示す方向にひたすら進むプレガルディエンは、生国ドイツだけでなく、日本の聴衆にもこよなく愛されている。自分の個性よりも曲の個性、声の力よりも言葉&旋律の力を重んじる彼の人気は、洋の東西を問わず驚くほどに高い。

 来る10月、そのプレガルディエンが東京で歌曲の夕べを連続開催。トッパンホールの人気シリーズ「歌曲(リート)の森」の一環で、シューベルトの3大歌曲集をまとめて披露し、早世の作曲家の「歌の命」を追究するという。第1夜は「白鳥の歌」より、レルシュタープとハイネの詩による13曲を自由な曲順で歌い上げ、ベートーヴェンの連作歌曲やブラームスの名歌を挟むステージ。端正な古典派の響きからロマン派の濃密なメロディまで、プレガルディエンが作り上げる新境地に期待したい。

 続いて第2夜は「水車屋の美しい娘」。第3夜は、意外にも、トッパンホールでは初めてという「冬の旅」。良き僚友のミヒャエル・ゲースのピアノと併せて、音楽の揺らぎに身を委ねるひとときをどうぞご堪能あれ。
文:岸純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2022年9月号より)

第25篇〈トッパンホール22周年 バースデーコンサート〉 2022.10/1(土)18:00 
第26篇 10/3(月)19:00  
第27篇 10/5(水)19:00 
トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
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