ピティナ・ピアノコンペティション特級 北村明日人がグランプリに決定

 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)が主催する第46回ピティナ・ピアノコンペティションの特級のファイナルが、8月17日にサントリーホールで行われ、北村明日人がグランプリに決定した。

 会場やYouTubeでのライブ配信で多くの聴衆が見守るなか、ファイナリストとなった4名は、飯森範親指揮の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と協奏曲を披露し、各々の持ち味を発揮。奇しくも、東京藝術大学の附属音楽高校〜大学院に在学中の4人が揃う形となったが、大舞台でのそれぞれのチャレンジに大きな拍手が贈られた。
 審査結果および演奏曲目は以下の通り。特級ファイナルの来場者が投票権を持つ聴衆賞では、同じく北村が第1位に選ばれ、以下、神宮寺悠翔、鶴原壮一郎、森永冬香と続いた。

グランプリ:北村明日人(ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58)
銀賞:神宮寺悠翔(チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23)
銅賞:森永冬香(チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23)
入賞:鶴原壮一郎(ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調)
聴衆賞第1位:北村明日人
サポーター賞第1位:今井梨緒

審査員●赤松林太郎・今峰由香・鬼久保美帆・金子勝子(審査員長)・迫昭嘉・田崎悦子・萩原麻未

左より:金子勝子(審査員長)、鶴原壮一郎、神宮寺悠翔
北村明日人、森永冬香、福田成康(ピティナ専務理事)

 グランプリを受賞した北村は、東京藝術大学を経て、スイスのチューリヒ芸術大学・大学院で学び、現在は東京藝術大学大学院修士課程に在籍中。伊藤恵、エッカルト・ハイリガースに師事。これまでにも、2019年の東京音楽コンクール第2位、2020年 Rahn Musikpreis(スイス)第1位などの実績を持つ。また、東京フィル、東京シティフィル、新日本フィルとも共演を行なっている。今回の特級では、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスからシェーンベルクまで、自身が最も親しんでいるというドイツ語圏の作品を中心にプログラムを組み、見事栄冠をつかんだ。
 北村には、グランプリ賞金として140万円、聴衆賞第1位の賞金として120万円ほかが贈られる。

表彰式より

 ファイナルでのベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番では、第1楽章冒頭から演奏する喜びにあふれた姿が印象的だったが、表彰式終了後におこなわれたグランプリの記者会見では、この作品について「表面はすごく柔らかい印象ですが、その中に絶対に動かしてはいけないもの、実は『テンペスト』ソナタのような激しいものがあり、その上で山のような、どーんと構えた美しい景色があるような気がしている」と表現した。音楽的に理想とするところとしては、「ステージで“自分をいなくする”。その曲がどれだけすごいのかを自分は“説明するだけの係”に徹する」と話すが、今回の協奏曲での指揮者やオーケストラとの自然なやり取りにおいても、そうした意識が表れているように感じられた。今後は、高校生の頃から楽しんでいたというアンサンブルや伴奏者としての活動にも非常に興味があるという。
 今年もまた注目の新星が誕生したピティナ・ピアノコンペティション特級。出場者たちの今後の国際コンクールなどでの活躍に期待したい。

ピティナ・ピアノコンペティション特級
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