【CD】エタンセル/郡恭一郎&神永睦子

 トロンボーンのソロ・アルバムはこの楽器の特別なファンでない限りはなかなか手を出さないと思われるが、郡恭一郎の新譜『エタンセル』はプレイヤーやファンにはもちろんのこと、特にそうではない方にもソロ楽器としてのトロンボーンのポテンシャルと魅力がたっぷりと伝わる逸品となっていて目から鱗。郡の丸みと滋味を帯びた素晴らしいサウンドと、スライド楽器とは思えぬほどの滑らかな超絶技巧による音の粒立ち。レガートな歌の魅力も十分に堪能できるが、とりあえずはスパークの協奏曲の第2楽章とアーバンの「変奏曲」でそれらをしかと体感していただきたい。ピアノは神永睦子。
文:藤原聡
(ぶらあぼ2022年9月号より)

【information】
CD『エタンセル/郡恭一郎&神永睦子』

スパーク:トロンボーン協奏曲/ストラヴィンスキー(ピエナール編):プルチネッラ組曲/アーバン:「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲

郡恭一郎(トロンボーン)
神永睦子(ピアノ)

妙音舎
MYCL-00014 ¥3300(税込)