ハイドン全集第15弾。メインの交響曲第89番は、冒頭から弦が爽やか。ノン・ヴィブラートが透明な響きを生み出している。前半も後半も反復はすべて行うので、構成の見通しを明確に聞き取れる。展開部のフェルマータや突然のパウゼが表現のアクセントとなる。緩徐楽章は、シチリアーノの付点リズムの揺れが快い。メヌエットは力強く激しい。終楽章はシンコペーションによる運動性が顕著で、最後はライブらしい自然な加速から白熱ぶりが伝わってくる。第4番冒頭楽章展開部で細かい表情の変化がうまく捉えられ、動機労作の始まりがみてとれる。第10番も両端楽章で生き生きとした躍動感が楽しめる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年9月号より)
【information】
SACD『ハイドン:交響曲集Vol.15/飯森範親&日本センチュリー響』
ハイドン:交響曲第89番 ヘ長調、同第4番 ニ長調、同第10番 ニ長調
飯森範親(指揮)
日本センチュリー交響楽団
収録:2019年8月、いずみホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00780 ¥3520(税込)