【SACD】ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番・ 第3番・第8番/伊藤亮太郎&清水和音

 第5番&第7番に次ぐ伊藤亮太郎と清水和音によるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第2集もまた前作に劣らぬ出来栄え。控えめなヴィブラートと美音による折り目正しく端正な語り口は誠に稀有なもの。これらの特質はともすると「おとなしい」「主張が足りない」となる可能性もありうるが、伊藤はベートーヴェンの筆致に虚飾なく真正面から対峙し、その妙味を言葉の最良の意味で「過不足なく」活かし切ることに成功、作曲家の凄さと同時に伊藤の見識の高さを思い知らされる。清水はヴィヴィッドなリズムによってピアノパートの独立性・独創性を現前させ、伊藤と絶妙なコントラストを形成。名演だ。
文:藤原聡
(ぶらあぼ2022年8月号より)

【information】
SACD『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番・ 第3番・第8番/伊藤亮太郎&清水和音』

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番、同第3番、同第8番

伊藤亮太郎(ヴァイオリン)
清水和音(ピアノ)

オクタヴィア・レコード
OVCL-00785 ¥3520(税込)