ユライ・ヴァルチュハ(指揮) 読売日本交響楽団

欧米で躍進する気鋭が読響初登場! 河村尚子とブラームスで共演

 河村尚子がブラームスの協奏曲を弾く。自らの身体を通して音楽を導きだすのが彼女の持ち味だ。獲物を前にした猟師を思わせる集中力を保ったまま、鋭く透明感のあるタッチで、強い感情をフレーズに込めていく。

 作曲家24歳のときに完成したピアノ協奏曲第1番は、若々しいパッションに満ちながら、「ピアノ付きの交響曲」と呼ばれるほどに重厚で巨大な音楽。密度の高い河村のピアノが、彼女との共演も多い読響と綿密に絡み合って一体化して響くブラームスが期待できるはずだ。

 隠れた鬼才との呼び声も高い、指揮者のユライ・ヴァルチュハはスロバキア生まれの46歳。2016年までの7年間、RAI国立交響楽団の首席指揮者を務め、ナポリ・サンカルロ劇場の音楽監督を経て、今シーズンからヒューストン交響楽団の音楽監督に就く。2014年にNHK交響楽団に客演のため来日しているが、読響とは今回が初顔合わせ。オーケストラとオペラとの二つの活動を通して培われた、力強い運びのなかに、声部を整え、フレーズに細やかな表情を与えていくスタイルだ。

 メンデルスゾーンの交響曲第3番 「スコットランド」は、この作曲家らしい細やかな動きがエモーショナルな波を起こしていく作品。気鋭の指揮者が、シャープなリズムで音楽を躍動させ、大きなうねりを作っていく予感に胸が高まるばかりだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2022年8月号より)

第249回 土曜マチネーシリーズ 
2022.8/27(土)
第249回 日曜マチネーシリーズ 
8/28(日)
各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
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