高関健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

初秋に味わう近代作品の傑作プログラム

 東京シティ・フィルのオータムシーズンは常任指揮者・高関健のタクトのもと、芸術の秋らしい渋いプログラムで幕を開ける。

 前半に演奏されるエルガーのヴァイオリン協奏曲は3楽章で50分近くかかる大作だ。作品の構えも大きく、大オーケストラの堂々とした序奏の後に、独奏ヴァイオリンが濃厚な歌を聴かせる第1楽章、郷愁を誘う第2楽章、超絶技巧の連発となるフィナーレへと続く。頻繁に取り上げられる曲ではないが、作品を献呈されたクライスラーが初演し、その後も時代を代表する名手たちが弾きついできた。今回の独奏は豪快なテクニック、スケールの大きい演奏でツウをうならせてきた竹澤恭子。まさにドンピシャの人選だ。

 後半、シベリウスの交響曲第4番は、彼のシンフォニーの中でもとりわけ思弁性が高く、考え抜かれた作品として知られる。チェロが重々しく歌いだし、至る所で苦悶の表情を湛えるが、時折ふっと希望の光が差し込んでくる。この曲の前にシベリウスが重い病を患い、そこから再び生命の活力を得たことと、これは無関係ではないだろう。

 このところシンフォニックな大作で大きな成果をあげている高関&東京シティ・フィルらしい選曲だが、この2曲がほぼ同時期に作曲されている点も見逃せない(エルガーは1910年、シベリウスは同年から翌年にかけて)。ロマン派の先を追求した2人の作品を並べることで、無調へと急進化していくモダニズムとは異なる、もう一つの時代性が浮かんでくる。そのあたりのプログラミングの妙も味わいたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年7月号より)

第354回 定期演奏会 
2022.9/2(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp