第43回 霧島国際音楽祭

自然豊かな地にトップアーティストたちが集う

 今年で43回目を迎える霧島国際音楽祭は、国内最大規模のクラシック音楽の祭典である。堤剛が音楽監督を務め、この夏は、堤、エリソ・ヴィルサラーゼ、前橋汀子、山下洋輔らベテランが出演するほか、ベルリン・フィルの樫本大進とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のフランク゠ミヒャエル・エルベンというドイツ最高峰のオーケストラのコンサートマスターが集い、この音楽祭で学んだカルテット・アマービレ、小井土文哉、北村陽らの若手たちも参加する。

 一番の注目は、日本のトップ・クラスの音楽家たちで編成される「キリシマ祝祭管弦楽団」のコンサートであろう。今年は、前述のエルベンをコンサートマスターに迎え、伊藤亮太郎(N響)や長原幸太(読響)ら主要オーケストラのコンサートマスターが顔を揃える。さらに、ヴィオラの須田祥子(東京フィル)、チェロの菊地知也(日本フィル)、コントラバスの吉田秀(N響)、オーボエの広田智之(都響)、ホルンの安土真弓(名古屋フィル)、ティンパニの久保昌一(N響)ら首席奏者たち、そしてヴァイオリンの川久保賜紀、チェロの上村文乃、フルートの上野星矢らソリストも参加する。古楽から現代音楽まで大活躍の鈴木優人が指揮を執り、オール・チャイコフスキー・プログラムを振る。ピアノ協奏曲第1番の独奏を務めるのは、新進気鋭の谷昂登。メインの交響曲第5番では名手たちの熱い演奏が聴けるだろう。

 音楽祭の名物といえば、チェロ・オーケストラ・キリシマ! 堤音楽監督のほか、菊地知也、西谷牧人、上村文乃、笹沼樹らのチェリストが集い、音楽祭のチェロ・クラス受講生も参加する。クレンゲルの「讃歌」などで、名手たちのチェロ・アンサンブルがまさにオーケストラのようなゴージャスなサウンドを作り上げる。

 もちろん、ヴィルサラーゼや山下洋輔のリサイタル、前橋汀子、堤剛と若き小井土文哉のトリオも楽しみ。樫本大進と川久保賜紀、小菅優ら名手たちのアンサンブルやエルベンを中心とする室内楽にも注目である。

 霧島国際音楽祭は、コンサートとマスタークラスからなり、受講生たちは、音楽祭参加アーティストたちにレッスンを受ける。そして各クラスの優秀者には賞が与えられ、受賞者ガラ・コンサートに出演することができる。

 ファイナル・コンサートでは、音楽祭に集ったアーティストと選抜された受講生たちでファイナル・コンサート・オーケストラが編成され、鈴木優人がオール・ドイツ・プログラムを振る。ゲヴァントハウス管ゆかりのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲をエルベンが弾くのは興味津々。そして、鈴木がフレッシュなブラームスの交響曲第1番を聴かせてくれることだろう。

 温泉だけなく豊かな自然にも恵まれた霧島高原に世界の著名アーティストや日本を代表する音楽家たちが集う霧島国際音楽祭での音楽体験は、忘れられない夏の思い出となるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2022年7月号より)

2022.7/21(木)〜8/7(日)
霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)、宝山ホール、霧島神宮 他
問:霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)0995-78-8000
  ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530
https://kirishima-imf.jp
※音楽祭の全プログラム詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。