出口大地(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

気鋭の日本デビューはハチャトゥリアン自身が指揮したプログラムで

 2021年ハチャトゥリアン国際コンクールで優勝、同年クーセヴィツキー国際指揮者コンクールでも最高位およびオーケストラ賞を受賞した若手指揮者、出口大地の日本でのデビューコンサート。

 プログラムはすべてハチャトゥリアンの作品。コンクールで指揮した交響曲第2番「鐘」を中心に、木嶋真優との共演によるヴァイオリン協奏曲 ニ短調、さらによく知られたバレエ音楽「ガイーヌ」の抜粋も演奏される。

 交響曲第2番「鐘」は独ソ戦の最中に書かれ、戦争に対する怒りや悲哀が込められている。ヴァイオリン協奏曲は、ハチャトゥリアンの名を国際的にした民族色豊かな作品。ランパルが後にフルート協奏曲に編曲した。「ガイーヌ」の中で最も有名な「剣の舞」はわずか8時間で作曲したという。

 実はこのプログラムは、1963年ハチャトゥリアンが指揮者として読響に客演した時と同じ内容。出口とハチャトゥリアンを結ぶ縁により、約60年ぶりに再現される。出口は東京フィルのインタビューで「今回のコンサートがアルメニアと日本の架け橋の一つになったらうれしい。彼の東洋的な音楽は日本人と相性が良く、私たちの琴線に触れるものがあります」と語っている。日本ではハチャトゥリアンの作品をまとめて聴く機会は、これまでも、またこの先も少ないだろう。民族的なエネルギーに満ち溢れ、平和への祈りや葛藤など、作曲家の思いが詰まった作品に耳を傾けるのは、今の時代にこそふさわしい。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2022年7月号より)

第148回 東京オペラシティ定期シリーズ
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