湯浅譲二の肖像

作曲家自らが辿る創作の軌跡

 8月で93歳を迎える湯浅譲二の誕生日を祝して、水戸芸術館で「湯浅譲二の肖像」と題したコンサートが企画されている。

 医師を父に持つ湯浅ははじめ医学を学んでいたが、途中で作曲に転向した。敗戦で深手を負った日本の作曲界を精力的に牽引し、その水準を世界的に高めた功労者の一人だが、1981年からはカリフォルニア大学でも教鞭を執るなど、世界の最前線で創作・教育に取り組んできた。抽象的な発想を、具体的な音響現象へと落とし込む手法がとりわけ鮮やかだ。

 昨年、水戸芸術館は「1964 音風景」という演奏会を企画し、湯浅の電子音楽を取り上げた。その時にも本人が登場し当時の話を聞かせてくれたが、今回はその発展版。選曲も湯浅自身が行い、湯浅の語法を熟知した奏者たちが結集する。彼の音楽思想の柱の一つを成す日本的なドラマトゥルギー、創作の根源へと果敢に潜航する試み、さらには湯浅が精力的に開拓してきた電子音楽まで、その歩みのエッセンスが伝わってくるものとなろう。片山杜秀の軽快なトークも華を添えるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年6月号より)

2022.7/9(土)16:00 水戸芸術館コンサートホールATM
問:水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 
https://www.arttowermito.or.jp