In memoriam ニコラ・アンゲリッシュ

Nicholas Angelich 1970-2022

 中堅世代を代表するピアニストの一人として、欧米や日本の主要楽団との共演など、広く活躍していたニコラ・アンゲリッシュが4月18日、病気のため51歳の若さで亡くなった。

©︎Jean François Leclercq/Erato

 1970年アメリカ・シンシナティ生まれ(フランス系)。7歳のときにモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を演奏してデビューを果たすなど早熟の才を発揮し、わずか13歳でパリ国立音楽院に入学。プルミエ・プリを得て卒業した。アルド・チッコリーニ、イヴォンヌ・ロリオ、ミシェル・ベロフらに師事したほか、レオン・フライシャーやマリア・ジョアン・ピリスらにも学んだ。1994年にジーナ・バッカウアー国際コンクールで優勝。2003年にはクルト・マズア指揮ニューヨーク・フィルとの共演でベートーヴェン「皇帝」を弾いて同楽団にデビューした。古典派からロマン派のレパートリーを得意としたが、20世紀の作品も多くとりあげた。アルゲリッチが高く評価していたことでも知られ、ルガーノやヴェルビエの音楽祭にも招かれた。強靭なテクニックとダイナミックな表現には定評がある。2006年、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで初来日。

 ソリストとしての活躍はもちろん、室内楽においても共演者からの信頼が厚く、アルゲリッチ、シャハム、ヨーヨー・マ、ルノー&ゴーティエ・カプソン等と共演。また、2020年2月の国際音楽祭NIPPONでは、諏訪内晶子とベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを披露していた。2021年11月には、東京交響楽団の定期演奏会への出演が予定されていた(ブラームスのピアノ協奏曲第2番)が、体調不良によりキャンセルされていた。

©︎Jean François Leclercq/Erato

 エラート、ハルモニア・ムンディなどのレーベルに録音を残しており、『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』『リスト:巡礼の年(全曲)』(ショク賞受賞)などのほか、昨年1月には『プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番、束の間の幻影 他』をリリースしていた。