東京二期会は4月23日(土)、24日(日)、Bunkamuraオーチャードホールにてプッチーニ作曲のオペラ《エドガール》をセミ・ステージ形式で上演する。
《エドガール》は、処女作《妖精ヴィッリ》に続くプッチーニ2作目のオペラ。若き日の作曲家の才能が凝縮された作品で、登場人物それぞれに個性的な楽曲があり、合唱も活躍。プッチーニがすでに書き上げていたミサ曲やオーケストラ曲からの転用もあると同時に、ビゼーやマスネからの影響もあり、そして、プッチーニ自身の後続の名作を彷彿とさせる音楽に満ちている。
1889年ミラノ・スカラ座での初演は、フォンターナによる台本が酷評にあい、わずか3回の上演で打ち切られた。その後、改訂が重ねられ、1905年ブエノスアイレス・コロン劇場での公演で現在の決定稿に至る。その時すでにプッチーニは《ラ・ボエーム》《トスカ》《蝶々夫人》などで名声を確かなものにしていた。結果的に《エドガール》に多大な労力をかけてきたことになるが、それゆえにプッチーニの青年期から中期の音楽が確かに彫刻された作品となった。現在も上演回数の少ない作品であるだけに、4月の上演は全幕聴ける貴重な機会となるだろう。
指揮は東京フィルハーモニー交響楽団首席指揮者のアンドレア・バッティストーニ。東京二期会とは、彼が25歳で伝説的な日本デビューを飾った《ナブッコ》以来、《リゴレット》《イル・トロヴァトーレ》《蝶々夫人》、そして昨年8月のヴェルディ「レクイエム」で共演を重ねてきた。今年、ついに日本デビュー10周年を迎える。なお《エドガール》に続いては、9月《蝶々夫人》でも東京二期会に登場を予定している。
オペラの舞台は14世紀初頭のフランドル地方。ドラマの背景にはフランドルの民衆とフランス軍との戦いがある。したがって、このオペラに描かれる戦争は、フランドルの民による「自由を守り、勝ち取る戦い」だ。
物語は、青年エドガールとフィデーリアとの恋愛が中心にある。劇的な表現が要求されるエドガールにはテノール福井敬と樋口達哉が、昨年の同シリーズ《サムソンとデリラ》サムソン役に続いてのダブル競演。ヒロインのフィデーリアにはソプラノ髙橋絵理と大山亜紀子、2人の関係を引き裂く女性ティグラーナにはメゾソプラノ中島郁子と成田伊美、フィデーリアの兄でありフランドル軍の連隊長を務めるフランクは清水勇磨と杉浦隆大、フィデーリアとフランクの父であり、ティグラーナの育ての父でもあるグァルティエーロにはバスバリトンの北川辰彦、清水宏樹がそれぞれ出演する。
1952年、二期会はプッチーニの《ラ・ボエーム》で旗を揚げた。70周年記念の本年を迎えての《エドガール》は、東京二期会にとっても初演となる作品だ。その上演の歴史のまた新しい1ページとなるだろう。
タイトルロール 福井敬&樋口達哉からのメッセージ
◆福井敬
若きオペラ作曲家プッチーニの、血潮が迸るかのような、鋭利な刃で削られたかのような、まだ荒削りでありながら、そこに美しい裸身の彫像を垣間見ることの出来る作品です。 マエストロ・バッティストーニの闊達な棒さばきにより、世界的にも演奏されることが稀有なこのオペラがどう立ち上るのか。1952年プッチーニの《ラ・ボエーム》で旗揚げをした二期会は、節目節目の年にプッチーニ作品を上演してきました。この度も、二期会の精鋭達の歌を、ぜひお聴き逃しなく!!
◆樋口達哉
今まで、プッチーニの作品は《ラ・ボエーム》をはじめ、たくさんの役を演じてきました。東京二期会では《蝶々夫人》《トスカ》《外套》があります。そして、今回のタイトルロール、最高に嬉しいです! この作品はプッチーニの2作目のオペラで、他のプッチーニ作品と比べたら上演の機会が少ない作品です。それはなぜか? 台本(物語)が良くないと言われていますが、実は主役のエドガールを歌うことが難しいから、という理由もあるかもしれません。艷やかで強靱な声が必要とされます。今回は、そんな難役に初挑戦! この《エドガール》、音楽はどこを切り取ってもプッチーニ節が満載です! 特に終幕、エドガールの独壇場からの幕切れの音楽は、ドラマチックな盛り上がりを見せます。このオペラの最大の聴きどころではないでしょうか。まさに《トゥーランドット》を彷彿とさせるような音楽!誰も寝てはいられません(笑)! そして、第二幕のエドガールのアリアは完成度が非常に高く、この曲もじっくりと聴きたいナンバーの一つです。そのほか、プッチーニのオペラでは珍しいバリトン役のフランクのアリアも素敵ですし、フィデーリアのアリアも聴きごたえがあります。ティグラーナの楽曲も見せ場がたくさん!今回の機会を逃したら、いつ上演に巡り会えるかわかりません。是非、是非、オーチャードホールに足をお運び下さいませ!
【Information】
二期会創立70周年記念公演
東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ《エドガール》(新制作/セミ・ステージ形式上演)
(全3幕、日本語字幕付き原語(イタリア語)上演)
2022.4/23(土)17:00、4/24(日)14:00
Bunkamuraオーチャードホール
指揮:アンドレア・バッティストーニ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演
エドガール:福井 敬(4/23) 樋口達哉(4/24)
グァルティエーロ:北川辰彦(4/23)清水宏樹(4/24)
フランク:清水勇磨(4/23) 杉浦隆大(4/24)
フィデーリア:髙橋絵理(4/23) 大山亜紀子(4/24)
ティグラーナ:中島郁子(4/23) 成田伊美(4/24)
合唱:二期会合唱団
問:二期会チケットセンター03-3796-1831
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http://www.nikikai.net/lineup/edgar2022/