アンスネスがマーラー・チェンバー・オーケストラと取り組む「モーツァルト・モメンタム」、昨年リリースされた『1785』に続く第2弾。1786年、モーツァルトの創作にモメンタム(勢い)がほとばしっていた頃の傑作を集めた。協奏曲ではつややかな音のオーケストラにまず魅了され、そこにシンプルな美を持つピアノが加わる。第23番第2楽章の独白のような表現、第24番第3楽章の軽やかさと重厚さのコントラストなど、聴きどころが多い。ピアノトリオの自然な掛け合いは水の中を泳ぐ3頭のイルカのよう。モーツァルトの美点を際立たせた、心地よく飽きのこないアルバム。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2022年5月号より)
【information】
CD『モーツァルト・モメンタム1786/レイフ・オヴェ・アンスネス&マーラー・チェンバー・オーケストラ 他』
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番、同第24番、ピアノ四重奏曲第2番、ピアノのためのロンド K.485、ピアノ三重奏曲第3番 他
レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ/指揮)
マーラー・チェンバー・オーケストラ
クリスティアーネ・カルク(ソプラノ)
マシュー・トラスコット(ヴァイオリン)
ジョエル・ハンター(ヴィオラ)
フランク=ミヒャエル・グートマン(チェロ)
ソニーミュージック
SICC-30597〜8(2枚組) ¥3960(税込)