第15回 安川加壽子記念会演奏会 〈2022 安川加壽子生誕100年〉

大功労者のアニヴァーサリー・イヤーに記す偉大なる業績

安川加壽子

 安川加壽子の名は、古くからの音楽ファン、いや今もピアノ関係者ならば、知らない人はいないだろう。彼女は、東京藝大等で数多の奏者を育てた戦後ピアノ教育の第一人者、および名ピアニストとして、1996年の急逝まで日本の音楽界を力強く牽引した。その多大な功績を後世に伝えるべく、門下生を中心に結成されたのが〈安川加壽子記念会〉。当会では演奏会を長年行ってきた。そして15回目となる今年は安川の生誕100年の記念の会として、盛大かつ意義深い公演が開催される。

 まず、プレ・コンサートでは、1950〜60年代の生徒発表会を再現。安川の孫弟子等の子どもたちが演奏し、かつて発表会に出演した木村かをりと青柳いづみこが思い出を語る対談も行われる。続くメイン・コンサートは、現在活躍中の門下ピアニストが出演し、安川が本邦初演した作品中心のプログラムを披露。平尾はるな、浜口奈々、岡本愛子、井上二葉(今年92歳!)のソロ、巨匠ジェラール・プーレ(客演ヴァイオリン)と堀江真理子、秦はるひと多美智子の各デュオ、三舩優子、青柳いづみこ、菅野潤の2台6手と、演奏者には斯界の重鎮や名手がズラリと顔を揃える。演目は、ラヴェルをはじめ安川ゆかりのフランスの名作が主軸をなしていて、その偉業に驚かされるし、平尾はるなによる父・平尾貴四男の作品、最後の3人によるファリャの「スペインの庭の夜」も実に興味深い。それに何よりこれだけのベテラン奏者の演奏を一夜で聴けること自体が極めて貴重。また会場では安川の資料も展示されるので、この機会に幅広い視点で比類なき業績を見直したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年3月号より)

*出演を予定していたヴァイオリンのジェラール・プーレは都合により出演できなくなりました。
代わって對馬佳祐が出演いたします。(2/10主催者発表)

2022.4/15(金)プレ・コンサート 17:00 メイン・コンサート 19:00
東京文化会館(小)
問:新演コンサート03-6384-2498 
http://www.shin-en.jp