“こだわりの名曲”を最高の楽器で聴いてください
「ハープの名器で知られるライオン&ヒーリー社創業150周年のお祝いの年なので、まずはハープの魅力の詰まった作品を弾いて楽器の魅力を伝えられたらと思います」
篠﨑和子は5年ぶりとなる自らの本格的なソロ・リサイタルへの抱負をそう語り始めた。
今回のリサイタルは前半が「幻想曲」、後半が「即興曲」に特化した明確なコンセプトを掲げている。多くのハープ・リサイタルにありがちな「一般的な楽器ではないから、有名ピアノ曲の編曲を」という発想はない。
「2009年のトッパンホールのリサイタルではハープのためのソナタばかりを取り上げたので、今回もまた、同じタイプの作品を色々な作曲家でというプログラムをもう一度行ってみたかったのです」
今回はハーピストではない作曲家が書いたものが選ばれている。唯一の例外はロシアのワルター=キューネの「《エフゲニー・オネーギン》の主題による幻想曲」。
「今回初めて演奏します。2008年の『東京のオペラの森』で小澤征爾さんの指揮でチャイコフスキーの歌劇《エフゲニー・オネーギン》が取り上げられた時にオーケストラの一員として参加しました。その時からいつかはこの幻想曲を弾いてみたいと思っていたのです。その頃から勉強だけはしていましたが、演奏会で弾く機会がなかったので…」
この曲以外にも編曲者シャンタル・マチューから直接レッスンを受けたC.P.E.バッハの「幻想曲」、リリー・ラスキーヌ・コンクールのジュニア部門を受けた時の課題曲で当時はしばしば演奏していたサン=サーンスの「幻想曲」を弾きたいと思い、そこで今回「幻想曲」でまとめてみようと考えた、とのこと。このリサイタル、選曲にあたっての個人的なこだわりが非常に強いのだ。一方後半の「即興曲」集について、フォーレは「フランスで色々な先生に教えていただいた曲なのでこれは取り上げなくては、と思いました」。グリエールは「コンパクトに良くまとまっていて好きな曲」と篠﨑は説明する。
ハープは楽器を身体で支え、直接指で弾きながら両足で7本のペダルを操作するだけに、その楽器デザイン、レイアウトが奏者にとって大変重要だ。今回使用するライオン&ヒーリーの楽器について篠﨑は「とてもバランスの取れた良い楽器です。音色も豊かに表現でき、重さも手頃で、楽器のカーヴやペダルが自分には合っています」と相性の良さを語った。
我が国を代表するハープの名手のひとり、篠﨑和子。彼女の演奏の魅力に心から浸れる至福のリサイタルが今からとても楽しみだ。
取材・文:谷戸基岩
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)
7月21日(月・祝)14:00 よみうり大手町ホール
問:松尾楽器商会0120-004-331
http://www.h-matsuo.co.jp/