ジョイント企画で若きピアニストそれぞれの“今”を体現
慶應義塾高校3年生の八木大輔と同2年生の秋川風雅の若きピアニストが、『ピアノ・ジョイント・コンサート 〜ザ・ヴィルトゥオーゾ〜』と題したコンサートを開く。直前に新譜『The Virtuoso』(アールアンフィニ)もリリースし、それぞれソロでいまもっとも弾きたい曲、得意な曲で逸材ぶりを発揮する。
八木「ピアニストを目指そうと思ったのは、13歳のときに国内外のコンクールで賞をいただいてから。ヨーロッパでも演奏する機会があり、音楽する歓びに開眼しました。ごく自然にのびのびと演奏できたからです。以来、モーツァルトをはじめ様々な作品を弾いていますが、特に惹かれるピアニストはマルタ・アルゲリッチ。ダニエル・バレンボイムも好きで、どのように音楽を引き出すのかに興味を抱いています。シュナーベルなどの古い時代の録音もよく聴き、ラフマニノフやクライスラー自身の録音などはフレーズの作り方や音色に魅了されます」
秋川「父がテノール歌手(秋川雅史)ですので、家ではいつも歌があふれている環境です。僕は大谷翔平選手の二刀流を超えてピアニスト、指揮者、歌手の三刀流を目指したい(笑)。ピアノではプロコフィエフやストラヴィンスキーなどのロシア作品に魅せられています。録音を聴くのもウラディミール・ホロヴィッツやラザール・ベルマンなどの音源。パワフルで情熱にあふれ、前進するエネルギーに満ちたピアニズムは最高です」
今回の公演プログラムはCDとリンクしている曲が多く、各々の個性が花開く。八木はショパン、モーツァルト、リストを披露。
八木「モーツァルトのピアノ・ソナタ第8番はイ短調ですが、僕はモーツァルトの短調の作品にとても惹かれるのです。奥深く悲壮感に富み、独特の雰囲気がある。最近はカール・ベーム指揮ウィーン・フィルの『レクイエム』を聴き、その美意識に近づこうと考えています。リストの『ドン・ジョバンニの回想』はドラマがあり、いろんなキャラクターが登場する。それをタッチや音色で変化させていきたい」
秋川はショパン、リストに加え、ベートーヴェンのソナタ「熱情」をとりあげる。
秋川「ショパンのエチュード op.10-4は特に弾きたい作品です。僕は超絶技巧とパッションをモットーとしているため、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番『熱情』とリストの『ハンガリー狂詩曲第6番』を選びました。音楽はすべて“歌“が基本だと思っていますので、『コンソレーション第3番』は豊かにうたいたい」
彼らは名前から「D&F」と名付けられているが、繊細さとドラマ性を内包する八木、推進力と自由闊達さを武器にする秋川という個性の異なるふたりには「Dynamism & Freedom」という感覚を抱く。CDには連弾作品も収録。未来に飛翔する俊英に期待!!
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2022年3月号より)
D&F(八木大輔&秋川風雅) ピアノ・ジョイント・コンサート
〜ザ・ヴィルトゥオーゾ〜
2022.3/31(木)18:30 Hakuju Hall
問:タップス03-3407-7371
https://eplus.jp/sf/detail/3554960001-P0030001P021001
SACDハイブリッド『The Virtuoso』
アールアンフィニ
MECO-1070
¥3300(税込)
2022.2/23(水・祝)発売