自らのルーツとともに捧げるシュトラウスへのリスペクト
日本と欧州を拠点に、第一線で活躍を続けるチェリスト・水谷川優子。2月のリサイタルはリヒャルト・シュトラウスをテーマに、なんと全曲R.シュトラウス・プロで臨む。チェロの演目としては意表を突くものだが、実は彼は様々な形のチェロ作品を残しており、新たな魅力を再発見するこの上ない好機となる。
演奏会は3部構成で、第1部は「近衛秀麿とR.シュトラウス」と題して、書籍『戦火のマエストロ 近衛秀麿』著者の菅野冬樹と、ナレーター・俳優・演出家の渡辺克己によるトーク。水谷川の祖父である近衛秀麿とドイツの巨匠の関係を知り、往時に思いを馳せる。第2部は若書きの佳品「ロマンツェ」や「ドン・キホーテ」のフィナーレ(ヴィルナー編)など、チェロ楽曲の魅力を浮かび上がらせる。第3部はチェロ・ソナタほかを。10代のときに書かれた作品だが、すでに雄大なスケールと爽やかな旋律美を備える立派な大作だ。これを黒田亜樹のピアノとともに、水谷川の解釈と音色で聴けるのは貴重。シュトラウス−近衛−水谷川……脈々と引き継がれる音楽の伝統を体感する。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年2月号より)
2022.2/19(土)14:00 紀尾井ホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
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