藤原歌劇団《蝶々夫人》ゲネプロレポート

今年創立80周年を迎えた藤原歌劇団。明日から上演される《蝶々夫人》はその記念公演のひとつです。粟國安彦演出による藤原歌劇団伝統の舞台は「これぞ日本人の《蝶々夫人》!」と言いたくなる、純日本的で完成度の高い舞台です。調度や小物、細かい所作に至るまで考え抜かれ、それでいてすべての流れが自然で美しいため、何度観ても味わい深い舞台として長く再演されてきました。

 当公演では、タイトルロールは3人の歌手が公演ごとに代わって演じます。26日に行われたゲネプロ(最終総稽古)は28日のキャスト。この日の主役を務める山口安紀子は、きめ細かい演技となめらかな歌唱で蝶々さんの感情を巧みに表現して涙を誘いました。ピンカートンは藤原歌劇団期待のテノールのひとり、笛田博昭。恵まれた体躯とスケール大きい歌唱で、見事なピンカートン役を演じました。
 また、近年オペラの場での活躍が目立つ園田隆一郎の指揮と、《蝶々夫人》を知り尽くした東京フィルが、ツボを心得た演奏で歌手に寄り添いつつ、心温まる響きでプッチーニの豊麗な音楽を聞かせて、舞台をしっかりと支えていました。

 ゲネプロに先立ち、23日には、29日のキャストでの舞台稽古が行われました。29日の主役を務める佐藤康子は、清らかな声で蝶々さんの清純さと一途さを表現し、感情を表に出しながら気品も保ち続け、やはり涙を誘う名唱を見せました。27日と29日のピンカートンをイタリアの人気テノール、ステファノ・セッコが務めるのも当公演の注目点です。このリハーサルでも声量・美しさともに充分の歌唱を披露、特に第1幕では“日本人社会に来た楽天的な外国人”という役回りそのものの名唱で存在感を示しました。
 どちらのキャストも、スズキやシャープレスはじめ、脇に至るまで出演者全員が安定感ある演技と歌唱を示していたことも印象深く、まさに一丸となってこの伝統の舞台を作り上げていました。

 創設以来、名作オペラを安心して観られる舞台演出で上演し続けてきた藤原歌劇団。その記念公演シリーズの最初にふさわしい、高水準かつ感動的な上演となることでしょう。

*写真は26日に行われた山口安紀子組から。
(text:M.HAYASHI  photo:M.Terashi/TokyoMDE)

■オペラ《蝶々夫人》(プッチーニ)
6月27日(金)18:30、28日(土)15:00、29日(日)15:00
新国立劇場オペラパレス
指揮:園田隆一郎 演出:粟國安彦 
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 
合唱:藤原歌劇団合唱部 
出演 蝶々夫人:清水知子(6/27)、山口安紀子(6/28)、佐藤康子(6/29)
   ピンカートン:ステファノ・セッコ(6/27、29)、笛田博昭(6/28)
   シャープレス:牧野正人(6/27、29)、谷友博(6/28)
   スズキ:牧野真由美(6/27、29)、松浦麗(6/28) ほか

問:日本オペラ振興会チケットセンター044-959-5067
http://www.jof.or.jp