《指環》のエッセンスをぎっしり凝縮
ワーグナーの偉大な大作、楽劇《ニーベルングの指環》。これほど深い感銘を受ける作品もないが、一方でこれほど実演が大変なオペラもない。「ワーグナーのオペラを声楽抜きで聴きたい」というのは矛盾した欲求だが、なんとか作品のエッセンスだけでも普段のオーケストラ公演で味わうことができないものだろうかと考える人は少なくないはず。
そんなワーグナー・ファンの悩みを解決してくれるのが、オランダの作曲家であり打楽器奏者でもあるヘンク・ド・フリーハー編曲の楽劇「ニーベルングの指環-オーケストラル・アドベンチャー」だ。自らが首席打楽器奏者を務めるオランダ放送フィルの委嘱により、フリーハーは長大な楽劇を演奏時間約70分ほどの管弦楽曲に編曲した。聴きどころを集めた単なる抜粋とは違い、まるで一つの交響詩のようにまとめられたこの作品は、1992年の初演以後たびたび各地で演奏される人気作となっている。声楽が入らないので、オペラを聴かない人でも、純オーケストラ作品としてワーグナーを楽しむことができる。
7月の東京交響楽団公演では、この「オーケストラル・アドベンチャー」がマーク・ウィグルスワースの指揮によって演奏される。これまで客演で高い評価を獲得している実力者の指揮とあって、凝縮された音のドラマを期待できそうだ。
また、近年ますます充実した活動を展開する小菅優が、リストのピアノ協奏曲第2番で独奏を務める。こちらも大きな聴きものだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)
第622回 定期演奏会
7/5(土)18:00 サントリーホール
第46回 川崎定期演奏会
7/6(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp