ジャンルを超越した活動を展開するダブルリードの達人・庄司さとしによる、まろやかで温かなイングリッシュ・ホルン&バス・オーボエの調べ。本場ウィーンに学んだ和田純子が生み出す、包容力に満ちたオルガンの音色。これらが紡ぐバッハとテレマンの佳品が、たっぷりとした残響の内に溶け合わされて一体に。天上にいるがごとくの聴取体験へと誘う。庄司はピリオド楽器の演奏にも通じているだけに、様式的な作法は見事。にもかかわらず、バッハの時代に存在しなかった楽器で演奏することに「少なからず、躊躇がある」と吐露する。いや。バッハがこれを聴けば、必ずや気に入るはずだ。
文:寺西肇
(ぶらあぼ2022年1月号より)
【information】
CD『《トリステ》/庄司さとし&和田純子』
テレマン:「忠実な音楽の師」より〈バスーン・ソナタ ヘ短調〉/J.S.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ第2番・第1番、フラウト・トラヴェルソとオブリガート・チェンバロのためのソナタ
庄司さとし(イングリッシュ・ホルン/バス・オーボエ)
和田純子(オルガン)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9040 ¥3080(税込)