1860年のウィーン。賭博好きが高じて破産寸前の伯爵ヴァルトナーには二人の娘アラベッラとズデンカがいる。士官のマッテオはアラベッラを愛するが、アラベッラは資産家の甥マンドリカと恋に落ちる。一方、妹のズデンカはマッテオへの同情が次第に愛へと変わり、姉の部屋の鍵と偽って自分の部屋の鍵を渡す。アラベッラとマッテオの不貞と勘違いしたマンドリカはアラベッラの不貞を責めるが、ズデンカの真実の告白でその誤解も解け、ズデンカはマッテオと結ばれ、アラベッラはマンドリカと永遠の愛を誓う。
2014年はR.シュトラウス生誕150周年にあたる。《エレクトラ》《ばらの騎士》《ナクソス島のアリアドネ》《影のない女》《町人貴族》《エジプトのヘレナ》と続いた、R.シュトラウスとオーストリアの詩人、劇作家ホフマンスタールの最後の共作《アラベッラ》が新国立劇場で上演中(5/22〜6/3)だ。
第2の《ばらの騎士》を目指した《アラベッラ》だが、同じウイーンを舞台にした《ばらの騎士》と比べ、より登場人物たちの「会話」に重点をおいた作品となっている。
ある冬の一日、ウィーンのとあるホテルで繰り広げられる物語は、“大人のためのおとぎ話”のようであり、そして、“誰も死なない”ハッピーストーリー。ホフマンスタールの美しい台詞がR.シュトラウスの気品ある華麗な音楽に伴われ、人間模様をリアルに紡ぎ出す。
演出・美術・照明は、新国立劇場でこれまで《ホフマン物語》《アンドレア・シェニエ》でヒットを連発するフィリップ・アルロー。1930年代に舞台を移し替えたアルローの演出は、“光の魔術師”との異名をとるように、「青」を基調とした鮮やかな舞台が印象的だ。第1幕では背景の青を白色照明のみで活かし、第2幕の舞踏会のシーンでは、300種類にも及ぶという青色照明を「青」に重ねあわせ、舞台全体を青一色に染めあげる。そして、微妙にうつろう光と影は、登場人物達の深層心理をも描き出す。主要登場人物以外の、ホテルに織りなす人々の動きも隅々までリアリティに溢れ、森英恵による華麗な衣裳も見どころのひとつだ。
アラベッラ役に、ヨーロッパの主要歌劇場でR・シュトラウスやワーグナーなどドイツ・オペラを中心に歌うアンナ・ガブラー、2011年新国立劇場《ばらの騎士》ゾフィー役で出演予定だった若きアニヤ=ニーナ・バーマンがズデンカ役で同劇場に初登場、マンドリカ役に、2013年ワーグナー生誕200年記念のバイロイト音楽祭《ニーベルングの指環》でヴォータンを歌ったヴォルフガング・コッホと居並ぶ豪華歌手陣に、2010年初演時にも歌った、妻屋秀和、竹本節子、望月哲也、萩原潤、与田朝子らが脇を固める。
指揮は、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場などにたびたび招かれているベルトラン・ド・ビリー。
(文:ぶらあぼ編集部 撮影:寺司正彦/提供:新国立劇場)
◆2013/2014シーズン
リヒャルト・シュトラウス/オペラ《アラベッラ》
Arabella/Richard Strauss
全3幕〈ドイツ語上演/日本語字幕付〉
2014年5月22日(木)18:30 25日(日)14:00 28日(水)18:30 31日(土)14:00 6月3日(火)14:00
新国立劇場 オペラパレス
予定上演時間:約3時間35分(休憩2回)
■指揮:ベルトラン・ド・ビリー
■演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
■衣裳:森英恵
■キャスト
【ヴァルトナー伯爵】妻屋秀和
【アデライデ】竹本節子
【アラベッラ】アンナ・ガブラー
【ズデンカ】アニヤ=ニーナ・バーマン
【マンドリカ】ヴォルフガング・コッホ
【マッテオ】マルティン・ニーヴァル
【エレメル伯爵】望月哲也
【ドミニク伯爵】萩原潤
【ラモラル伯爵】大久保光哉
【フィアッカミッリ】安井陽子
【カルタ占い】与田朝子
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
■チケット
S 27,000円 A 21,600円 B 15,120円 C 8,640円 D 5,400円 Z 1,620円
新国立劇場ボックスオフィス
03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/140522_001610.html
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https://ebravo.jp/archives/9924
■参考
東京フィル〜特別インタビュー | ベルトラン・ド・ビリーが語る『アラベッラ』『英雄の生涯』
http://www.tpo.or.jp/information/detail-20140522.php