小畠伊津子 ピアノリサイタル

独創的な選曲と雄弁なピアニズム

 昨年、若き日に研鑽を積んだドイツでのコンサートがやむなく延期となった小畠伊津子だが、「友情と応援」の思いを込めてリリースした録音は、抑制美の中にも確固たる信念を伝える美しいアルバムとなった。10月9日の王子ホールで開催されるリサイタルでは、そのCDにも収めたバッハ=ヘスの「主よ、人の望みの喜びよ」およびバッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」という二つのトランスクリプションの間に、全7曲からなる木下牧子のピアノ曲集「記憶の森」(2018)を配置する。

 木下作品の個々の曲は無題だが、色彩感とニュアンス、多様なリズム表現に富んでおり、雄弁な小畠のピアニズムが一曲一曲の世界観や魅力を、存分に映し出してくれるに違いない。後半はやはりアルバムにも収めたショパンのソナタ第3番。ユニークでドラマティックなプログラミング、そして小畠の誠実な音楽創りは、長引くコロナ禍における慰めと励ましを与えてくれることだろう。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年10月号より)

2021.10/9(土)15:00 王子ホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
https://www.proarte.jp