円熟の大作と爽快な佳品の貴重なる生体験
2014年度の都響のプログラムが面白い。5月のB定期も、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番とコルンゴルトの交響曲という、生では滅多に聴けない組み合わせ。そこでまずはコルンゴルトに触れておこう。
“モーツァルトの再来”と呼ばれたオーストリアの作曲家コルンゴルトは、1934年からハリウッドで映画音楽に携わった。交響曲は、晩年の52年に米国で完成された円熟の作。劇的な第1楽章、スケルツォの第2楽章、ブルックナーやマーラー風テイストの瞑想的な第3楽章、楽天的で躍動感溢れる第4楽章と続く内容は、多彩で歯ごたえ充分だし、『革命児ファレス』『海賊ブラッド』等の映画音楽も使われているので耳なじみがいい。今年は歌劇《死の都》が複数上演されるなど再ブーム(?)の兆しあるコルンゴルトだが、国内のオーケストラで同曲を聴く機会はもちろん稀少。
指揮はマルク・アルブレヒト。64年ドイツ生まれで現在ネザーランド・オペラの首席指揮者を務める彼は、ベルリン・フィルやバイロイト音楽祭等に招かれ、日本での客演も数多い。R.シュトラウスやベルクを得意とし、コルンゴルトの交響曲はCDをリリースしているから、今回は勝負プログラムでもある。ピアノは76年イスラエル生まれのサリーム・アブード・アシュカール。メータに才能を見出され、ウィーン・フィル、シカゴ響等との共演歴多数の実力者が弾く、明快で愉しいメンデルスゾーンも聴きものだ。
生彩に充ちた音楽に定評あるアルブレヒトが、高機能の都響を振れば、レアな名作の真価が明らかになること間違いなし。ここは絶対に要注目!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年4月号から)
第771回定期演奏会 Bシリーズ
★5月27日(火)・サントリーホール Lコード:31337
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp