注目の若手から現代屈指の世界的名手まで
コンクール・イヤーを飾る豪華アーティストたち
浜松における音楽文化の発信拠点、アクトシティ浜松を舞台に今年度も多彩なアーティストたちが招かれる。この春から夏にかけての注目公演をご紹介したい。
まずは気鋭の若手アーティストたちによる「アクト・ニューアーティスト・シリーズ 2021」。5月9日の公演では2020年東京音楽コンクールピアノ部門第2位(最高位)の谷昂登が、リストのピアノ・ソナタ ロ短調ほかを披露する。03年生まれの谷は故・中村紘子も認めた逸材。
7月4日は19年イタリアPAS国際打楽器コンクールで第2位を獲得したマリンバ奏者、新田吏央がジョセフ・シュワントナーの「ヴェロシティズ」、バッハの無伴奏チェロ組曲抜粋ほかを演奏する。SINSKE、安倍圭子の薫陶を受けた俊英が、マリンバの表現力の豊かさを伝える。
8月14日は19年日本管打楽器コンクール第1位のトランペット奏者、三村梨紗が招かれる。プログラムはベーメの「バレエの情景」、アルチュニアンの「エレジー」ほか。東京藝術大学を経てドイツに留学、巨匠マティアス・ヘフスに師事する次代を担う才能だ。
続いては世界のトップ・アーティストたちが名を連ねる「アクト・プレミアム・シリーズ 2021」。6月17日はピアノの名匠ダン・タイ・ソンが登場する。モーツァルトの「トルコ行進曲付き」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、ショパンの「英雄ポロネーズ」ほかの名曲を奏でる。
また、7月10日にはヴァイオリンのヒラリー・ハーンが、ピアノのアンドレアス・ヘフリガーとともにベートーヴェンの傑作に挑む。ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」と第10番という組合せは、この分野におけるベートーヴェンの到達点。現代最高峰の名手がどんなベートーヴェン像を築くのか。
なお、同シリーズでは、9月にチェロのジャン=ギアン・ケラス、12月にヴァイオリンのネマニャ・ラドゥロヴィチ、来年3月にメゾソプラノの藤村実穂子の公演が予定される。
さて、浜松といえば忘れることのできないのが、3年に一度の浜松国際ピアノコンクール。今年はその開催年にあたる。11月のコンクールに先立つ5月10日、コンクール開催を記念して、三浦謙司と中桐望が梅田俊明指揮新日本フィルと共演する。三浦は第9回コンクールで奨励賞を受賞し、2019年にはロン=ティボー=クレスパン国際音楽コンクールで優勝を果たした。中桐は第8回コンクールの第2位。三浦がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番で、中桐がサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」で独奏を務める。一晩でふたりのソリストによる協奏曲を聴けるのがうれしい。
5月22日には「Road to 2027 プロジェクト in 浜松」として「仲道郁代 ピアノ・リサイタル」が開かれる。仲道の演奏活動40周年とベートーヴェン没後200年が重なる2027年に向けた、遠大なリサイタル・シリーズの第3弾である。シューマンの幻想曲、シューベルトの「さすらい人幻想曲」ほか、幻想曲の系譜をたどるという好奇心を刺激するプログラムだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年4月号より)
*6月17日の「アクト・プレミアム・シリーズ2021 ダン・タイ・ソン」は公演延期となりました。
【延期日程】2022.1/23(日)15:00
*7月10日の「アクト・プレミアム・シリーズ2021 ヒラリー・ハーン&アンドレアス・ヘフリガー」は公演延期となりました。
【延期日程】2022.3/1(火)19:00
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:浜松市文化振興財団053-451-1114
https://www.hcf.or.jp
※各公演・発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。