今までにない《こうもり》をお見せします!
豊かな表現力を持った懐の深い歌唱で活躍する、ソプラノの小川里美。2月に東京芸術劇場と石川県立音楽堂の共同公演《こうもり》でロザリンデを歌う。
「《こうもり》は4度目ですが、ロザリンデをドイツ語で歌うのは初めてなので、やりがいを感じると同時に、緊張もしています。すごくチャーミングな役なので、そこを演じられたらいいなと思います」
設定がユニークな上演だ。
「舞台は現代の東京。アイゼンシュタインは日本に赴任してきた証券ディーラーです。ロザリンデはその日本人妻で、しかも元モデル…。元ミス・ユニバース日本代表という私の経歴を使っちゃおうというのは面白いですよね。役を自分に近い存在として感じられてうれしいです」
そんな設定なので、台詞もドイツ語と日本語の両方。
「外国人と日本人の混合キャストですが、小林沙羅さんのアデーレも日本人の家政婦なので、私とアデーレは日本語で会話し、オーストリア人の夫アイゼンシュタインとはドイツ語で話す、という具合です。だから多少日本語訛りのドイツ語でも許していただけるのはありがたいです(笑)。日本人が外国人を演じる違和感を取り払うという狙いもあるのでしょうけれど、とても画期的だと思います。プランを聞いて、すごく新鮮だなと感じましたし、今までにはない《こうもり》をお見せできると思うので、ぜひお楽しみに」
公演では、メラニー・ホリディが芸術アドヴァイザーを務めている。
「メラニーさんは、外国人チームのキャスティングと、2幕のパーティではゲストとして歌も聴かせてくれます。華があって素敵で。楽しみですよね」
数年前から、《イリス》《カルメン》と、東京芸術劇場のシアターオペラでは、いわば常連だ。
「シリーズでは、その前に《トゥーランドット》でカヴァーに入ったのが最初です。響きの良いホールですから気持ちよく歌えます。東京音大出身なので池袋はなじみ深いですし、“ホーム”だと思っています。リニューアルしてからは、楽屋ごとに違う北欧家具が入っていて可愛いのですよ」
この《こうもり》のあと、横須賀の《椿姫》、東京・春・音楽祭の《ラインの黄金》、ヤマハホールの《トロヴァトーレ》と《椿姫》、メノッティ《泥棒とオールドミス》のほか、未発表も含めてオペラ漬けの多忙な一年になりそうで、「私はどうなっちゃうのでしょう」と笑う。新役へのチャレンジも。今年は小川里美のオペラに注目だ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2014年1月号から)
石川県立音楽堂×東京芸術劇場
共同制作公演《こうもり》
★2月15日(土)・石川県立音楽堂(音楽堂チケットボックス076-232-8632) Lコード:54932
20日(木)・東京芸術劇場(東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296) Lコード:35459