東京文化会館《響の森》Vol.47 ニューイヤーコンサート2021

新年の幕開けには質実剛健なサウンドがふさわしい


 想定外の事態に見舞われた2020年を経て、新しい年には新しい希望を託したい。東京文化会館主催《響の森》シリーズの「ニューイヤーコンサート」は、年明け早々の1月3日に硬派な演目を並べる、毎年恒例の注目公演である。しかし今回ばかりは、新年を寿ぐにとどまらず、2021年に「これまで通りの公演が楽しめること」自体を占うような、例年とは違った意味合いも込められるだろう。

 公演内容も大きな期待を抱かせてくれる。オーケストラは例年通り東京都交響楽団で、指揮者は我らが誇るドイツ音楽の巨匠、飯守泰次郎。彼が最も得意とするワーグナーとベートーヴェンという重厚な演目が用意されたことで、正月気分も吹き飛ばしてしまうような、雄大にして熱い演奏が展開されるのは間違いない。

 前半は世界的なピアニスト、小川典子の独奏によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。小川は動画メッセージで、「2021年の幕開けにふさわしい、どんな困難にも負けない、必ず復活するというメッセージの強い、すばらしい協奏曲」と語る。作曲者生誕250年が明けた直後、屈指の名作でその思いを受け止めたい。後半は、ワーグナーの人気楽曲、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第1幕への前奏曲と《タンホイザー》序曲で、東京文化会館大ホールいっぱいに響きわたる、オーケストラの華やかな音色に包まれる。ドイツの巨人たちの名作を、質実剛健な名演で体感することで、新しい一年に向かう強いエネルギーをもらえるはずだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年12月号より)

2021.1/3(日)15:00 東京文化会館 
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp