アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

端正な造形と豊かな情熱を持って古典派シンフォニーの最高峰に挑む

アラン・ギルバート
C)Peter Hundert

7月、東京都交響楽団に首席客演指揮者アラン・ギルバートが帰ってくる。毎回の共演で意欲的なプログラムを組んで、互いの相性のよさを感じさせるギルバートと都響だが、今回のプログラムはモーツァルトの「三大交響曲」。交響曲第39番、第40番、第41番「ジュピター」というモーツァルトの創作史における頂点をなす決定的な名作に取り組む。

ギルバートはこれまでにもモーツァルトやハイドンといったウィーン古典派のプログラムを都響と共演している。昨年7月の定期ではモーツァルトの交響曲第38番「プラハ」を指揮して好評を博した。また、昨年12月にはハイドンの交響曲第90番で、思わず笑みがこぼれるような楽しい演奏を聴かせてくれたのも記憶に新しいところ。こういった小編成のレパートリーを指揮するときのギルバートはことのほか生き生きとしているように見える。緊密なアンサンブルを実現するために、しっかりとオーケストラを統率しているのはたしかだろうが、あたかも一プレイヤーとして楽員たちとともに室内楽を楽しんでいるかのような趣も漂う。

ギルバートと都響のコンビからは明快さ、明瞭さを感じる。みずみずしく歯切れのよい表現で作品の隅々にまで光を当てる。加えて、音楽の随所に生命力が息づいている。端正な造形と豊かな情熱が絶妙のバランスで共存するモーツァルトを披露してくれるのではないだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2020年5月号より)

*新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、アラン・ギルバートの来日が困難となったため、本公演は中止となりました。(6/30主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

第906回 定期演奏会Cシリーズ
2020.7/30(木)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第907回 定期演奏会Bシリーズ
2020.7/31(金)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp