指揮者にして名プロデューサーの西脇義訓と「デア・リング東京」は、一般的なオーケストラ配置を解体し直し、しかも演奏としての成果を挙げ続けてきた。その大きな結実としてのブルックナーは、とにかく優しく、しなやか。前代未聞の配置により通常埋もれがちな音が浮かびあがり(その逆も)、聴く側の作品像をも洗い直していく。奏者個々人の自発性に任せることで音に無二の温もりが宿る。その響きに浸るにつけ、矛盾せずに「自発性」を「引き出し、導く」という高次元も期待したくなる。また、図らずも「楽器配置の常識」が問い直される世情になり、西脇の取り組みは様々なヒントともなり得よう。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年7月号より)
【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第7番/西脇義訓&デア・リング東京オーケストラ』
ブルックナー:交響曲第7番(ハース版)
西脇義訓(指揮)
デア・リング東京オーケストラ
N&F
NF-65809 ¥3000+税