鈴木優人(指揮) 読売日本交響楽団

時代を超えたプログラムでマルチな音楽性を存分に発揮


 2020年4月から読響の指揮者/クリエイティヴ・パートナーに就任する鈴木優人が、5月の定期演奏会に登場する。鈴木は、1981年オランダ生まれ。東京藝術大学及び同大学院、オランダ・ハーグ王立音楽院修了。現在は、指揮者、鍵盤楽器奏者、作曲家、プロデューサーとしてマルチな活動を続け、今年2月には第18回 齋藤秀雄メモリアル基金賞(指揮部門)を受賞するなど新時代のホープとして活躍が目覚ましい。

 読響には16年「読響アンサンブル・シリーズ」でデビュー以来、共演を重ねるが、定期演奏会は今回が初めて。ベートーヴェンの影響を強く受けたシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」と、20世紀イタリアの作曲家ルチアーノ・ベリオの「レンダリング」を組み合わせた選曲で挑む。ベリオの作品は、シューベルトが未完の交響曲第10番のために残したスケッチをもとに作曲・編集したもの。シューベルトの旋律は補筆せず、その合間をベリオ自身の音楽で修復(レンダリング)、過去と現代の間を行き来する。鈴木自身、J.S.バッハのカンタータBWV190の喪失楽章の復元やモーツァルト「レクイエム」の補筆・校訂を行うなど、音楽学・作曲の観点からも楽譜と向き合ってきた。その経験と彼の指揮者としてのアプローチがどのように結びつくのか興味深い。

 さらに、世界最高峰のトランペット奏者マティアス・ヘフスを迎えてのドイツの作曲家オスカー・ベーメの名曲「トランペット協奏曲ヘ短調」も大注目。ヘフスの輝かしい音色と完璧な技巧、高度な音楽性が堪能できるだろう。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2020年4月号より)

*新型コロナウィルス感染症の感染拡大を考慮し、本公演は中止となりました。(5月5日主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

第598回 定期演奏会 
2020.5/13(水)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp