巨匠が伝授した劇的オペラの真髄を聴く
2020年の東京・春・音楽祭は、リッカルド・ムーティ指揮のヴェルディ《マクベス》(演奏会形式)で華麗に開幕する。これは、ムーティが若い音楽家にオペラを創り上げるまでの極意を伝える「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」の一環。同アカデミーでは、10日間にわたってレクチャーの他、作品解説や受講生による演奏会も行われる。
《リゴレット》が題材だった前回、アカデミーを一部見学したが、極めて示唆に富む内容だった。本公演でその指導の成果が直接的に反映されるのは、通しでレクチャーに参加している東京春祭特別オーケストラの演奏。国内外で活躍する日本の若手プロ奏者が集う同楽団が、ムーティの薫陶を受けていかなる演奏を聴かせるかが、まずは注目点となる。そして前回と大きく異なるのが、抜粋上演だった《リゴレット》と違って《マクベス》全曲が演奏されること。すなわち現代最高のイタリア・オペラ&ヴェルディ指揮者が描く名作の全容と真髄を存分に堪能することができる。ソリストもパワーアップ。ムーティ指揮の《オテロ》等で主役級を演じているバリトン、ルカ・ミケレッティ(マクベス)、現代屈指のバス、リッカルド・ザネッラート(バンコ)、引く手数多のテノール、フランチェスコ・メーリ(マクダフ)に、17年デビュー後の進境著しいソプラノ、アナスタシア・バルトリ(マクベス夫人)を加えた強力な布陣は、これだけでも聴く価値がある。
ドラマティックで幻想的な傑作《マクベス》は、主要歌手が等しく活躍する上に、情景を巧みに表現する管弦楽が重要な作品でもある。それゆえ演奏会形式での上演は意味深いし、巨匠が指揮台上で魅せる全曲演奏への期待もよりいっそう高まる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年1月号より)
*新型コロナウイルスの感染拡大防止を考慮し、3月6日(金)〜3月15日(日)までの「リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」の開催は延期となりました。(2/28主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.tokyo-harusai.com/news_jp/20200228/
2020.3/13(金)18:30、3/15(日)15:00 東京文化会館
問:東京・春・音楽祭チケットサービス03-6743-1398
https://www.tokyo-harusai.com