絶好調のコンビが放つ“衝撃的作品”と王道の名曲
熱気に満ちた演奏と選曲の面白さで好評を重ねている、常任指揮者の川瀬賢太郎と神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンビ。中でも12月の定期演奏会は、彼らの面目躍如たる考え抜かれたプログラムで話題を集めている。
最大の注目は、20世紀ドイツのベルント・アロイス・ツィンマーマンの「ユビュ王の晩餐のための音楽」だろう。ルネサンスから自作まで、数世紀に及ぶ多数の作品を徹底的にコラージュして作り上げた傑作にして怪作。何度もニヤリとすること間違いないが、抱腹絶倒とはいかないようなメッセージや苦みも感じられ、特にシュトックハウゼン作品と、ある有名作2曲の旋律で作られた終曲は痛烈。川瀬の作りあげる強烈な音響でこそ体感したい衝撃的作品だ。
もうひとつの注目は、ムソルグスキー「展覧会の絵」をレオポルド・ストコフスキー編曲版で聴けること。近年演奏機会が少しずつ増えているのがこのストコフスキー版で、著名なラヴェル版とは全く違うアプローチから、この名曲の新たな魅力を発見できるはず。
コンサート冒頭は、ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第一幕への前奏曲。唯一の“オリジナル作品”で、王道ともいえる輝かしいオーケストラの響きを堪能できる。ただし「ユビュ王」では、この前奏曲と「展覧会の絵」の一節もそれぞれ引用されていて、コンサート全体を通して聴衆に与える歪んだインパクトはいかばかりか。川瀬と神奈川フィルの快演(怪演?)で聴けるのが楽しみでならない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年11月号より)
定期演奏会 みなとみらいシリーズ 第354回
2019.12/6(金)19:00、12/7(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
https://www.kanaphil.or.jp/