パウル・クレーの2つの絵画作品をテーマに開いた2公演のライヴ録音を、クレーの別作品「アフロディテの解剖学」における「切断・解体から再創造」の制作過程に倣い、新たな“作品”として再創造を図る、瀬川裕美子の試みは先鋭的かつ刺激的だ。断片であるモーツァルトの幻想曲、舞曲形式を再構築したバッハのパルティータ、数の公理性で時間や空間を超越しようとしたクセナキス…。これらに新たな秩序が与えられると、ステージの”核”として置かれながら、あえて未収録としたブーレーズ「ソナタ第2、3番」の「中心かつ不在」の意味が浮き彫りに。“録音を出す意義”へ一石を投じる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年11月号より)
【information】
CD『アフロディテの解剖学〈切断・解体・再構成〉〜瀬川裕美子ピアノリサイタル Vol.6&7 ライブ〜』
ピート=ヤン・ファン・ロッスム:amour/ストラヴィンスキー:ピアノ・ソナタ/モーツァルト:幻想曲ハ短調 K.396(断片)/クセナキス:ヘルマ―ピアノのための記号論的音楽―/近藤譲:三冬/J.S.バッハ:
パルティータ第6番/ブーレーズ:12のノタシオン〜第2曲 他
瀬川裕美子(ピアノ)
収録:2018年1月&19年3月、トッパンホール(ライヴ)
トーンフォレスト
TFCC-1903 ¥2000+税