海外で磨かれた音楽性をメンデルスゾーンで結実させる
名手8人による色鮮やかなアンサンブル
音楽家育成のためのさまざまな事業を展開している「ローム ミュージック ファンデーション」の支援を受けた若い音楽家は、これまでにすでに4,400人超。今年4回目を迎える「ローム ミュージック フェスティバル」は、彼らと、関西の学生たちが出演する音楽祭だ。声楽・室内楽からオーケストラまでさまざまな公演が、2日間、昼夜にわたり春の京都を彩る。
世代を代表するチェロ奏者・横坂源も、ロームの奨学金を得て2008年からドイツで学んだ。この日のために結集するスペシャル・アンサンブルで、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲を弾く。
「室内楽には、友人との打ち解けた会話のような即興的な演奏者同士のやりとりがあり、さらにそれぞれの曲への思いが混ざり合う中で生みだされる色鮮やかな瞬間を体感することができます。今回は8人の弦楽器奏者の演奏なので、より華やかな音の響きやメンデルスゾーンの夢幻の世界を、多くのお客様にお届けできたらと思っています。
ユダヤの血を引き、幼少期からさまざまな迫害を受けてきたメンデルスゾーンは、音楽に救いを求めて10代の頃からひたすら音楽に心血を注いでいきます。この弦楽八重奏曲は、16歳の多感で繊細な性格と、本来持ち合わせていた独自の美意識が全編を通して感じることのできる彼の最高傑作です」
チェロの渡邊方子とは過去にロームのチェロ・アンサンブルのコンサートで共演した経験があるが、他は初めての奏者ばかり。新たな出逢いが楽しみだという。
巨匠たちから室内楽の極意を学ぶ
13歳でデビュー。桐朋学園の高校から同大学のソリスト・ディプロマ・コースを経て、シュトゥットガルト国立音楽大学とフライブルク国立音楽大学に留学した。
「6年間をドイツで過ごしました。何でも吸収できる学生時代ですが、同時にお金のない時。支援していただき感謝しています。生涯忘れることのできない、数多くの素晴らしい経験をさせていただきました。
師であるジャン=ギアン・ケラスや、マスタークラスで出会ったミクローシュ・ペレーニ、アンナー・ビルスマのような尊敬する芸術家にレッスンを受け、話を聞けたことは今でも大切に心に刻まれています。どのような音を求め、言葉にし、表現していくか。それがいかに大切かということを、改めて学びました。
とにかくいろいろな国の学生と室内楽を経験しようと決めていました。彼らの堂々とした強いメンタリティーによって、私自身も変化していったように思います。室内楽のやりすぎで、ケラスからは『自分に集中しなさい』と怒られましたが(笑)」
さまざまな国へ足を運び、空気、言語、国民性を実際に感じ取った経験が現在でも作曲家や曲をイメージするヒントになっているという。国によって音楽言語も変化することを体験し、様式感や語法について考えるきっかけとなった。
もし留学を迷っている若い学生に声をかけるとしたら。
「リスクも伴うのは確かですが、旅行で訪れることと、住むことでは環境が大きく異なるので、ぜひ飛び込む勇気を持ってほしいと思います」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年4月号より)
ローム ミュージック フェスティバル2019
2019.4/20(土)、4/21(日) ロームシアター京都
※横坂源が出演するのは4/20のリレー コンサート Bのみ。スケジュールの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:エラート音楽事務所075-751-0617
https://micro.rohm.com/jp/rmf/activity/rmfes/2019/