新国立劇場 マスネ《ウェルテル》

多感な詩人の愛と死――フランス・オペラの傑作を重厚なプロダクションで


 ドイツの文豪ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』を題材に、フランスの作曲家マスネが書いたオペラ《ウェルテル》は、《タイス》や《マノン》とならぶマスネの代表作のひとつ。新国立劇場では2016年に、トゥールーズ・キャピトル劇場芸術監督やパリ・オペラ座総監督を務めたニコラ・ジョエルの演出によって上演している。この時はタイトルロールを、これが日本での初オペラ出演となったディミトリー・コルチャックが歌い大好評を博した。

 今回ウェルテルを歌うのはミラノ・スカラ座やパリ・オペラ座など世界の第一線で歌うサイミール・ピルグ。甘く柔らかい声の持ち主で、いわゆる「テノールらしいテノール」の声で歌われてこその役柄だけに、ピルグの登場に期待は高まる。さらにウェルテルが恋い焦がれる人妻シャルロットを、バイロイト音楽祭でも活躍する日本が生んだスター、藤村実穂子が歌うのも話題だ。ちなみに藤村はこれがロールデビューとなる。そのほか、シャルロットの婚約者アルベールに日本を代表するバリトン黒田博、シャルロットの妹ソフィーに日本が誇るプリマ幸田浩子が出演するのも見逃せない。

 ジョエルの演出は、抑えた色調の衣裳や奥行きと重厚感のある装置によって、ゲーテの原作にあるドイツのプロテスタント特有の禁欲的な世界観が表現されたもの。日本では上演機会の多くないフランス・オペラだが、この再演によってフランス・オペラの魅力がさらに多くの人に伝わることを期待したい。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2019年2月号より)

2019.3/19(火)18:30、3/21(木・祝)14:00、3/24(日)14:00、3/26(火)14:00
新国立劇場 オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 
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