鮮烈で生気漲る21世紀のモーツァルト
2006年10月、ダニエル・ハーディング率いるマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)は、日本でモーツァルトの後期三大交響曲=第39〜41番を披露した。それは、コンパクトな編成にピリオド奏法を採り入れながらキビキビと進む、刺激的な演奏だった。だがそれでいてロマン派の大曲同様の充足感を味わった。情報量の多さと表情の豊かさがそう感じさせたのだ。
あれから13年、当コンビは全く同じプログラムで東京オペラシティに還ってくる。1975年英国生まれのハーディングは、いわゆる“ニューカマー”指揮者陣のトップランナー。現在パリ管とスウェーデン放送響の音楽監督を務め、複数の楽団の来日公演や新日本フィル等を通じて日本でも周知の存在だ。97年にアバドのもとで創設されたMCOは、世界20ヵ国から集まった第一級の音楽家45名を中心に活動している精鋭集団。意思の疎通が容易な編成で、皆が自発性を発揮しながら、緻密かつ躍動的な表現を聴かせる。98年から2011年まで首席指揮者や音楽監督を務め、現在は終身桂冠指揮者の地位にあるハーディングとは、互いを熟知した間柄。彼にとってMCOは自分の意思を最も反映できる楽団と言っていい。
16年パリ管の音楽監督に就任後、ハーディングの指揮は変化し、持ち前の鮮烈な音楽に、しなやかな呼吸感や自然に湧き出る確信性が加わった。そんな今の彼が、旧知にしてビビッドなMCOを振ると、いかなるモーツァルトが生まれるだろうか? しかもホールはMCOの編成と古典派交響曲に最適の空間。13年ぶりの登場への期待は限りなく大きい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年2月号より)
2019.3/14(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp/