瞑想を通して深まり、静まっていく感覚を大切にして弾きました
東京音楽大学を経てワルシャワのショパン音楽院(現ショパン音楽大学)大学院を最優秀首席で卒業したピアニストの平澤真希。日本やポーランド各地で幅広く演奏活動を行う彼女が新譜『ディアーナ』をアールアンフィニ・レーベルよりリリースする。
「音を通して自分と対話する感覚をみなさんと共有したいと思い作りました。瞑想や禅で得られた、深まり、静まっていく感覚をとても大切にしながら選曲、録音しています。タイトルの“ディアーナ”(サンスクリット語で静慮の意)もそこからつけたものです」
「月の光」や「愛の夢」にショパンのワルツなどが収められ、一見名曲集のようでありながら、シマノフスキの練習曲やスクリャービンの「アルバムの綴り」なども入った、かなりスパイスの効いた選曲となっている。
「スクリャービンのこの作品には1ページの楽譜の中にこの作曲家特有の神秘的な要素など、すべてが詰まっていて、このディスクにとてもピッタリだなと思い、入れました。2曲目のショパンとの流れもとてもうまくいったと思います」
ディスクには平澤の自作曲「祈り」も含まれている。これは2016年リリースのアルバム『水の記憶』にも収められているが、今回のコンセプトに合致しているということでボーナストラックとして録音したという。
「この曲は2011年、帰国後まもなく震災が起こり、自宅の畑で収穫をしているときに、“この自然が長く続いていきますように”という想いが高まり生まれた曲です。作品自体に手を加えてはいないのですが、今回のレコーディングの前には、福井県のお寺で“接心”という、1週間で100時間くらいの座禅を行い、あらゆるものをそぎ落として臨んだので、演奏はかなり変わったと思います」
また特徴的なのがアルバムの最後に置かれた「エリーゼのために」だ。通常イメージされるこの曲のイメージからすればかなりゆっくりとしたテンポになっている。
「この曲のテンポ指示はもともと“ポコ・モート(少し動きをもって)”なのですが、今回の演奏のためにベートーヴェンの草稿を見たところ、“モルト・グラツィオーソ(非常に優雅に)”と書かれていたんです。またレコーディング中、ベートーヴェンの心の苦しみに触れていくような感覚があり、自然とテンポがこのようになっていきました」
19年1月23日には王子ホールでCD発売記念リサイタルが行われるが、1月21日から27日までの間、ディスクのブックレットに使用された写真(撮影:久保田健)も含めた日本の美しい風景を集めた写真展も銀座の創画廊で開催される。リサイタルとリンクする内容になっているので、ぜひあわせてチェックしてほしい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年12月号より)
平澤真希ピアノリサイタル
2019.1/23(水)19:00 王子ホール
問:アーツ・アイランド03-6914-0353
http://www.artsisland.com/
CD
『ディアーナ』
アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)
MECO-1051(SACDハイブリッド盤)
¥3000+税
2018.11/21(水)発売