ディーヴァとディーヴォによる華麗なる大バトル!
ベテランから若手までスター歌手たちが大集合し、紅組・白組に分かれて文字通り雌雄を決する…。いささか古風ではあるが未だに根強い人気を誇る、大晦日の国民的歌合戦の面白さをそのままオペラ界に導入して、2016年の9月からスタートした本企画。昨年から開催日を12月に移し、今年で3回目。主催側の「クラシック音楽界の年間の恒例行事として定着させたい」という意気込みがどうやら実を結びつつあるようだ。初回の紅組勝利を受けて、サントリホール(大ホール)をステージ後ろのP席までほぼ満杯にしたという前回は白組の勝ち。今年も勝敗を決めるのは会場の観客たちによる審査(本家と同様に、麻布大学野鳥研究部が集計を担当)に委ねられている。
なお、出場歌手と同様に指揮者も紅白に分かれて、毎年違う顔ぶれが起用されるのも本公演のお楽しみのひとつ。今年も、紅組はドレスデン出身でノイシュトレーリッツ州立劇場(ドイツ)の音楽監督を務めた実績を持つロメリー・プフントを、白組はびわ湖ホールやリューベック歌劇場で数々のプロダクションを成功に導いている沼尻竜典をそれぞれ起用する万全の態勢だ。オーケストラは東京シティ・フィル。
もちろん、所属団体の垣根を超えて集まった総勢24名の歌手陣のラインナップも豪華絢爛。紅組のトップバッターは3回目の出場、日本を代表するプリマドンナである砂川涼子(ソプラノ)によるレオンカヴァッロ《道化師》の〈鳥の歌〉。そして光岡暁恵(ソプラノ)がヴェルディ《椿姫》の〈ああ、そは彼の人か〜花から花へ〉で華を添える。この他ソロでは、澤畑恵美(ソプラノ)が《こうもり》から、佐藤美枝子(ソプラノ)が《夢遊病の娘》から技巧的なアリアを披露。初出場のメゾ林美智子によるドニゼッティ《ラ・ファヴォリータ》の〈私のフェルナンド〉にも注目。トリを務めるのはこちらも3回目の出場、オペラ以外の分野でも活躍する腰越満美(ソプラノ)によるプッチーニ《蝶々夫人》の堂々たる〈ある晴れた日に〉だ。
対する白組のトップバッターを務めるのはバスバリトンの三戸大久。続いてカウンタテナーの彌勒忠史やバリトンの上江隼人らが続く。3回目の出場、デビュー20周年を迎えて国際的な活躍を続ける村上敏明(テノール)によるジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》の〈ある日青空を眺めて〉や、テノールの笛田博昭によるヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》の〈見よ、あの恐ろしい炎を〉などにも期待大。須藤慎吾(バリトン)が歌うジョルダーノの同オペラより〈祖国の敵〉がトリを飾るのも楽しみだ。また、ソロ以外でも「イタリアの太陽」の異名をとるプリモ、樋口達哉(テノール)と人気者、青山貴(バリトン)によるヴェルディ《ドン・カルロ》の〈友情の二重唱〉など聴きどころが盛り沢山。この他、後半戦前に「エール交換」として披露される、若手の注目株4名の男女混声によるヴェルディ《リゴレット》の四重唱にも期待。さて、勝利はどちらの手に?
文:東端哲也
(ぶらあぼ2018年11月号より)
2018.12/3(月)18:30 サントリーホール
問:テンポプリモ03-3524-1221
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