ザルツブルク音楽祭 ペレイラ芸術監督&ラーブル=シュタードラー総裁

名門音楽祭が日本にフォーカス

この夏も名だたる音楽家たちが7月19日から9月1日にかけて、オーストリアのザルツブルクに集う。アレクサンダー・ペレイラ芸術監督とヘルガ・ラーブル=シュタードラー総裁体制によるザルツブルク音楽祭は今年で2年目。今回は日本の音楽が脚光を浴びる。まず注目なのは、シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団の出演。ザルツブルク音楽祭委嘱作品の細川俊夫作曲「嘆き」が世界初演されるほか、武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」、ベルリオーズの「幻想交響曲」が演奏される。

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アレクサンダー・ペレイラ芸術監督 photo: M.Terashi

「日本を代表する作曲家として武満徹、細川俊夫のお二人をとりあげます。細川さんには連作歌曲を委嘱しました。ザルツブルクの詩人トラークルの詩を題材とした作品で、現在ヨーロッパで活躍する若いソプラノ、アンナ・プロハスカが歌います。初演にあたっては、アジアでもっともすぐれたオーケストラであるNHK交響楽団がふさわしいと考えました」(ペレイラ芸術監督、以下P)。

日本の現代音楽に加えて伝統音楽も上演される。「音楽祭のはじめに宗教音楽のシリーズを組みました。私たちは他の宗教からどんな影響を受けているのか、どんな関係にあるのかを示すシリーズになるでしょう。昨年はユダヤ教、今年は神道と仏教、来年はイスラム教の音楽にフォーカスします」(P)

この宗教音楽シリーズでは、迦陵頻伽声明研究会による声明や、琵琶と唱による平家物語が、アーノンクールによるハイドン「天地創造」などと並んで演奏される。オペラではともに生誕200周年となるワーグナーとヴェルディの作品が目立つ。

「ザルツブルクはモーツァルトゆかりの地ですから、ヴェルディとワーグナーが持っていた“モーツァルト的精神”が息づく作品として《ファルスタッフ》と《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を選びました。ヴェルディはある手紙のなかで《ファルスタッフ》をモーツァルトを称えるために作ったと書いています。《ファルスタッフ》では第1ヴァイオリン8台編成のウィーン・フィルが演奏します。ブッセートの劇場やサンターガタの別荘で演奏されたであろう小さな室内アンサンブルのイメージです」(P)

《ファルスタッフ》はメータ指揮、ミキエレット演出。《マイスタージンガー》はガッティ指揮、ヘルハイム演出。ともにウィーン・フィルがピットに入る。

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ヘルガ・ラーブル=シュタードラー総裁 photo: M.Terashi

さらに「両作曲家の出世作」ということでヴェルディ《ナブッコ》(ムーティ指揮ローマ歌劇場管弦楽団)と《リエンツィ》(P・ジョルダン指揮マーラー・ユーゲント管弦楽団)の演奏会形式が並べられる。他にもパッパーノ指揮ウィーン・フィルの《ドン・カルロ》(ペーター・シュタイン演出)や、ヴェルディとブラウンフェルスのオペラ、シラーの戯曲の3通りで上演される《ジョヴァンナ・ダルコ》(ジャンヌ・ダルク)など興味深い企画が目白押しだ。もちろんオペラ以外のコンサートラインナップも超強力。

「よく『ザルツブルク音楽祭はチケットが手に入りにくい』と言われるのですが、26万枚も販売しているのですから、初日以外はまだ入手できます。現在、音楽祭には世界72ヵ国から来場者があり、その半分はヨーロッパ以外の国から来ています。ですから、ぜひ日本からもたくさんの方に聴きに来ていただきたいですね」(ラーブル=シュタードラー総裁)
取材・文:飯尾洋一
(ぶらあぼ7月号から)

ザルツブルク音楽祭 ★7月19日(金)〜9月1日(日) http://www.salzburgfestival.at

シャルル・デュトワ(指揮) NHK交響楽団の公演
★8月25日(日)20:00・フェルゼンライトシューレ NHK交響楽団 http://www.nhkso.or.jp