確固たる意志と奥深い音楽性を携えて、国際的な楽壇の第一線を疾走し続けるヴァイオリニスト、五嶋龍。7月末から8月初旬にかけて、全国9ヵ所を巡る3年ぶりのリサイタル・ツアー「忘却にして永遠に刻まれる時」を敢行する。シューマン、ドビュッシー、イサン・ユンのヴァイオリン・ソナタに、現在の自分を投影する先鋭的なステージは、各地でソールドアウト続出の大反響に。東京では早くも、追加公演の実施が決定した。
謎めいたツアー・タイトルには、「たとえ細部は忘れ去られようと、演奏が聴き手の人生の一部になり、何かのきっかけで音と思いが蘇れば」との思いを込めたという。銘器ストラディヴァリウス「ジュピター」を駆り、世界を股にかけての演奏活動の一方、柔道で汗を流し、ビジネスにも挑戦。「多面的に物事を『知りたい』と思い、その一つひとつが、解明されるのが楽しい」と語っていた。近年は、北朝鮮による拉致問題の早期解決を求める活動にも力を注ぐ。
ピアノの盟友マイケル・ドゥセクとのステージは、3つのソナタが核となる。まずは「正気と狂気、作曲者の内面が投影されている」と五嶋が評するシューマンの第2番を。かたや、「色彩で溢れかえっているよう」というドビュッシーは、「そのコントラストを大事にしたい」。そして、やはり世界的ヴァイオリニストの姉みどりのプロジェクトをきっかけに知り、「弾いていると、不思議な光景が浮かぶ」というユンの作品を配する。疾走する名手の“いま”を捉えたい。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2018年8月号より)
2018.8/9(木)19:00 サントリーホール
問:イープラス0570-09-5050
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