アジア オーケストラ ウィーク 2017

オーケストラで味わうアジアの豊かな音楽文化


今年も恒例のアジア オーケストラ ウィーク(以下AOW)が開催される。アジア太平洋地域の各国からオーケストラを招くAOWは、2002年に開始され、今年で16回目を迎える。これまでに15ヵ国から47団体ものオーケストラが参加しており、アジアの音楽文化の多様さと豊かさを伝える貴重な機会となっている。
今年、参加するのは3団体。上海フィルハーモニック管弦楽団とマレーシア・フィルハーモニー管弦楽団、そしてホスト・オーケストラとして関西フィルハーモニー管弦楽団が登場する。上海フィル、マレーシア・フィル、ともにAOWには初登場となるが、それぞれ実績のある団体だけに、今年はいっそうアジアのオーケストラの躍進ぶりが感じられることになるのではないだろうか。会場は東京オペラシティ。なお、関西フィルとマレーシア・フィルは福島県いわき市で合同演奏を行なう。
上海フィルは04年より現在の名称を使用しているが、その前身は1996年に誕生した上海放送交響楽団に遡る(上海交響楽団とは別団体)。今回のプログラムでは芥川也寸志の弦楽のための三楽章「トリプティーク」、ショパンのピアノ協奏曲第2番、ドヴォルザークの交響曲第8番を演奏する。指揮は首席指揮者のリャン・ツァン。1979年生まれのウィーン音楽大学で学んだ俊英である。ショパンで独奏を務めるのはジェ・ヤン。ジュリアード音楽院に学び、ニューヨーク・フィルやバイエルン放送交響楽団とも共演している。
マレーシア・フィルは1998年の設立。オーディションにより世界各地から精鋭を募って結成され、現在24ヵ国からの演奏家を擁するという多国籍集団だ。ロリン・マゼールやネヴィル・マリナーといったビッグネームとも共演し、歴代の音楽監督にはクラウス・ペーター・フロールも名を連ねる。石油・ガスの国営企業ペトロナスから支援を受けるオーケストラとしても知られる。指揮は専任指揮者の古澤直久。武満徹の「弦楽のためのレクイエム」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、ヴィヴィアン・チュアの「栄光の頂点」(2017年委嘱作品)、ベートーヴェンの交響曲第7番を演奏する。ピアノはジュリアード音楽院で学ぶテングク・イルファンが務める。
関西フィルは音楽監督オーギュスタン・デュメイのヴァイオリンと指揮により、ショーソンの「詩曲」、ラヴェルの「ツィガーヌ」、マスネの「タイスの瞑想曲」、そしてビゼーの交響曲第1番を演奏する。このコンビを東京で聴けるという点でも注目される。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2017年10月号より)

2017.10/5(木)19:00 上海フィルハーモニック管弦楽団
10/6(金)19:00 マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団
10/7(土)16:00 関西フィルハーモニー管弦楽団 東京オペラシティ コンサートホール
10/8(日)15:00 関西フィル&マレーシア・フィル合同演奏会 いわき芸術文化交流館アリオス
問:日本オーケストラ連盟03-5610-7275
アリオスチケットセンター0246-22-5800(10/8のみ)
http://www.orchestra.or.jp/