充実のコンビが“天地”を創る
高関健が東京シティ・フィルの常任指揮者となって3年目のシーズンに入った。同フィルは、今年5月定期の高関指揮によるブルックナーの交響曲第3番、6月定期の下野竜也指揮によるドヴォルザークの交響曲第6番と、密度の濃い好演が続き、群響でも実証した高関のオーケストラ・ビルダーとしての手腕が、よりいっそう顕在化してきたように感じる。そうした中、9月定期では高関の指揮によってハイドンのオラトリオ「天地創造」という大物が披露される。
「天地創造」は、晩年のハイドンの総決算ともいうべき傑作。神秘的な混沌から始まるこの曲は、第1部で天地創造の第1日から第4日、第2部で第5日と第6日、第3部でアダムとイヴの姿が描かれる、緻密かつ壮大な音楽ドラマだ。それゆえ高関の的確な構成力と造形力がモノを言うのは間違いない。ソリストも、《魔笛》の夜の女王役で高い評価を獲得し、宗教曲でも力を発揮しているソプラノの安井陽子、宗教曲等のソロやバッハ・コレギウム・ジャパンで活躍するテノールの中嶋克彦、新国立劇場等のバス役には欠かせない名歌手・妻屋秀和を揃えた万全の態勢。特に重要なバスが、深い声で雄弁に歌う妻屋であるのは実に心強い。
高関&シティ・フィルの合唱付大作といえば、就任1年目のドヴォルザーク「レクイエム」、2年目のベルリオーズ「ファウストの劫罰」における、引き締まった進行と東京シティ・フィル・コーアの充実した合唱が相まっての名演が思い出される。となれば、オーケストラ及び合唱との音楽作りが一段と深化した3年目の「天地創造」への期待は、大いに膨らむ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2017年8月号より)
第309回 定期演奏会
2017.9/8(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/