音楽と映像アートがつむぐ特別な時間
音楽とビジュアルのコラボレーションは、今やさほど珍しいことではないだろうが、ビジュアリスティックなフランス近代のピアノ曲と、和のテイストなどを新感覚で磨き上げた映像アートとの組み合わせは、やはり好奇心をくすぐられるものだ。
音楽はドビュッシー、ラヴェル、サティ、そして吉松隆の作品。楽譜に命を吹き込むのは、近代フランス音楽のスペシャリストであるパスカル・ロジェ。一方のヴィジュアルは、浮世絵など日本独特の美的センスを有したアートに新しい光を当て、アニメーションなどの映像を駆使して観る者を別世界へと誘ってくれる美術作家の束芋(たばいも)。音楽の息吹を映像で表現し、その映像によって音楽の中にある異空間が顔を出し…という具合に、相互作用によって生まれる時間こそが新しい作品なのである。
実はこの音楽とビデオ・インスタレーションによる試みは、2012年に初演されたものの、即時完売によって体験できなかった方が続出。5年たった今年、ようやく待望の再演となったものだ。名手によるライヴ演奏を聴きながら幻想的な映像作品を堪能する70分は、1本の実験的な新作映画を観るような感覚かもしれない。その映像と音楽は聴衆の中にある“何か”を刺激し、呼び覚まし、会場を後にするときには街の風景や音が違って感じられるかも。特別な時間を過ごしたい方は、この2日間をお忘れなく。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2017年7月号から)
7/5(水)19:00、7/6(木)13:30 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/