ウィーンの銘器で表現するシューベルト晩年の世界
ハノーファー留学中の2007年にシューベルト国際ピアノコンクールで優勝、各地での精力的な演奏活動によりヨーロッパでもシューベルト弾きとして認められるようになった佐藤卓史。彼が14年から行っている、シューベルトのピアノ関連器楽曲を網羅する「シューベルトツィクルス」は、7回目を数える。回を重ねてシューベルトへの理解をより深めてゆく中、今回取り上げるのは、4手による作品を中心としたプログラム。ゲストは、05年のシューベルトコンクール優勝者で、ドイツの新聞で“黄金の手を持つピアニスト”と評されたという川島基(もとい)だ。
シューベルトのスペシャリスト2人が奏でる連弾曲の中で特に注目したいのは、「人生の嵐 D947」と「大ロンド D951」。シューベルトの死の年である1828年に書かれた作品で、人生の苦悩のすべてを解き放つかのような前者と、苦難を乗り越えた境地にたどり着いたかのような後者で、シューベルト晩年の精神世界を表現する。
ソロでは、「12のドイツ舞曲」や「5つのエコセーズ」、「12のレントラー」など、演奏機会の多くない舞曲集が取り上げられる。誠実な姿勢で作品を探究する佐藤らしく、楽曲の魅力を浮き彫りにする音楽を聴かせてくれることだろう。
使用楽器は、ちょうどシューベルトが没した1828年に創業したウィーンの老舗ピアノメーカー、べーゼンドルファーのインペリアル。芳醇なウィンナー・トーンが紡ぐシューベルトの魅力を味わうことができそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2017年6月号から)
6/22(木)19:00 東京文化会館(小)
問:アスペン03-5467-0081
http://www.aspen.jp/