新感覚の音楽レクチャー、いよいよ東京で開講!
今、加藤昌則のクラシック入門講座が人気だ。神奈川で始まった講座は、愛知、長野、静岡、三重、富山へ。そしてこの度、ようやく東京でも開催される。
「作曲家として学んできた楽曲についての知識、ピアニストとして音を出したときの演奏効果の理解やステージに立つ心理、その両方を知るからこそ伝えられることがあります。もともと音楽家が身近にいない環境で育ち、何もわからないところから自分で情報を求めて歩んできたので、初心者に何が必要なのかもわかります。それをなるべく楽しく届ける方法を日々考えています。…とはいえ、この講座にこれほどの需要があるとは自分でも驚きです! 最近、講師の仕事は喉が大事だからと、外出時はマスク必須なのです(笑)」
軽妙な話術に加え、なにより新感覚のアプローチとわかりやすさが評判だ。
「例えば第1回のテーマは室内楽。僕自身、10代の頃は室内楽に興味がなかったのですが、自分で演奏するようになり、何がおもしろいのかを理解できた。そのため以前の講座では、楽器が弾けない方たちに出てきてもらい、お互い声をかけずに呼吸で一音を合わせる興奮を体感していただきました。好評でしたね。こういう瞬間がたくさんあるのが室内楽なのだと理解すると、聴き方が変わります。実際、シューベルトやベートーヴェンなどの室内楽作品は特定の演奏者向けに書かれたものも多い。たとえば、メンバーのヴィオラが下手だからそのパートが簡単になっているとか、そんなことをわかって聴くと面白いですよね」
そして第2回のテーマは「独奏」。
「普段伴奏を要するような楽器の“無伴奏”作品は、音楽として成立させることが簡単ではありません。また、奏者が一人で舞台に立つ孤独や、世界観による表現の違いを意識すると、違う聴き方ができるようになるでしょう。講座の内容は近々の演奏会と連動しているので、僕が提示した情報で少しでも感度が磨かれ、生演奏をより楽しんでいただけたら」
そして「ぶらあぼ」読者のようにすでにクラシックに詳しい方なら、クラシックの世界に誘いたい誰かと一緒に受講するのもおすすめだ。
「受講者のレベルがさまざまでも、みなさんに何かを得て帰ってもらうことを心がけています。リアクションを見ながら、内容を調整するんです。寄席に行くのが好きなので、反応を見て話すテクニックを参考にしています。話芸のプロを目指しているわけではありませんが(笑)。現代のクラシック界で活動していて、演奏家から間口を広げる努力が必要だと感じている中、これは自分にしかできないことだと使命感をもって臨んでいます」
取材・文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2017年5月号から)
作曲家・加藤昌則クラシック入門講座 クラシックのとびら
第1回 室内楽 5/25(木)19:00 第2回 独奏(ソロ) 9/14(木)19:00
文京シビックホール(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp/
※講座が入場無料になる「プレミアム・セット券」などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。