中村あんり(オーボエ)

フレンチ・オーボエの魅力を伝える新星がアルバムデビュー

 シーン注目の中村あんりが5月に待望の初アルバムをリリースする。実は12歳からサックスを学び、数々の国際コンクールでの優勝を経てパリ国立高等音楽院に首席入学を果たした彼女は、在学中にオーボエに転向したという異色の経歴の持ち主。
「古典を学びたくて紹介されたオーボエのクラスを聴講しているうちに、方向性も楽曲に対するアプローチも全てがしっくりきて、この楽器しかないと思いました。周囲にもかなり反対されましたが直感を信じて貫いたのです」
 その後、巨匠モーリス・ブルグと出会い、その内弟子となって研鑽を積んだことで正統なフランス派奏法を継承。伸びやかで華麗なフレージングで帰国後はオーボエ界に新風を吹かせてきた。
「独自の自然な呼吸法をマスターしたことで知られるブルグ先生には、やはり息の大切さを教えられました。フレンチ式やジャーマン式といったスタイルは特に意識していません」
 身についたフランス的感覚が自然と演奏に醸し出されるのが強み。そんな彼女に再び訪れた運命の出会いが、今回のアルバムでも共演するピアニストの斎藤雅広だった。
「斎藤先生と初めてご一緒したのは帰国後5年くらいの頃でしたが、目の前に懐かしいフランスの風景がよみがえって一気に呼び戻された感じがしました。初めてのCDを作る際にも、共演者として先生以外は考えられませんでした!」
 収録曲はフランスものが中心だが、先ずはクララ・シューマン「3つのロマンス」が印象的。
「ブルグ先生門下のノラ・シスモンディさんにも師事していたのですが、彼女の演奏で初めて聴いて素敵だと思ったのです。ヨーロッパのオーボエ奏者の間では近年、人気曲でもあります」
 晩年のプーランクが亡き畏友プロコフィエフに捧げた「オーボエ・ソナタ」もお薦めだが、楽壇を代表する名ファゴット奏者の霧生吉秀を迎えた同「オーボエ・トリオ」も聴きどころ。
「お二人と共演できたのが夢のよう。フランス人と一緒に演奏した時よりも自分の中でイメージが鮮明になりました」
 ラヴェル最後のピアノ独奏曲で、オーボエ泣かせの管弦楽版でも知られる「クープランの墓」も圧巻だ。
「スカイプでブルグ先生にこの曲をレコーディングすると報告したら、自身のパリ管時代の録音を引っ張り出して聴き入っていました(笑)。今回のピアノとの丁々発止のやりとりも魅力的ですよ」
 6月には同じパリで学んだ上野優子との共演によるリサイタルも(6/17・ヤマハ銀座コンサートサロン)。「いろんな人との出会いを通じて成長できたら」と語る彼女に期待したい。
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

CD
『フレンチ・オーボエの飛翔!』
ナミ・レコード
WWCC-7838
¥2500+税
5/25(木)発売

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