チャイ・コン覇者が挑む無伴奏の刺激的な世界
2011年に22歳で第14回チャイコフスキー・コンクールを制したアルメニアのチェリスト、ナレク・アフナジャリャン。すでに何度も来日して、ずば抜けた超絶技巧と、そのテクニックに裏打ちされたロマンティックな歌ごごろを聴かせている。今回は無伴奏の作品だけを集めたリサイタルを開く。
プログラムは、バッハ「無伴奏組曲第1番」および「第4番」、ジョージ・クラム「無伴奏ソナタ」(1955)、黛敏郎「BUN RAKU」(1960)、リゲティ「無伴奏ソナタ」(1948-53)。この楽器のためのバイブルであるバッハと20世紀作品を並置した刺激的な構成だ。前衛的な作品も多いアメリカ人作曲家クラム(1929〜)だが、この無伴奏ソナタは、幻想曲や変奏曲などの伝統的な枠組みの上に書かれた現代作品。黛の「BUNRAKU」は、文楽(人形浄瑠璃)の印象をチェロに移した作品で、太棹三味線のバチさばきをピッツィカートで、義太夫節の節回しを弓奏で模す。アフナジャリャンは、「日本の文化を理解した上でオーセンティックに演奏したい」と語っている。リゲティの作品は、ウィーンへ亡命する前の若きリゲティによる、民族的な素材に根ざした音楽だが、ソビエト当局から演奏禁止を命じられたといういわく付きの作品。
アフナジャリャン本人が「どれも好きな曲ばかり」と言うように、以前の来日で聴かせて好評を得たピースも含まれており、自信をもって贈る、満を持しての再演というところなのだろう。聴き逃せない。
文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年5月号から)
6/13(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/
他公演(プログラム:バッハ無伴奏チェロ組曲全曲)
6/11(日)、6/15(木)京都府立府民ホール アルティ(075-441-1414)