名匠によるドイツ・リートの“王道”
不世出の名ドイツ・リート歌手フィッシャー=ディースカウの存在は、あとに続くバリトン歌手たちにとって大きすぎて、今後は彼と比較してはいけないのではないかとさえ思っていたが、そんなことはなかった。ディースカウ亡きあとのリート界にも、後継たるべき名バリトンたちが続々と名乗りをあげている。多くのディースカウ門下の中で、早くから最も師を彷彿とさせる歌いぶりを示していたのがディートリヒ・ヘンシェルだ。
もちろん師のコピーなどではない。1967年生まれで近く50歳を迎える。その美しい声の響きと深い表現力にはますます磨きがかかり、独自の高みを極めつつある。8年ぶりの来日公演では、〈魔王〉などシューベルトの名曲集と、シューマンの最高峰「リーダークライス」を歌う。ピアノは長く共演を重ねているパートナーの岡原慎也。というより、日本にヘンシェルを紹介したのが彼と言っていい盟友だ。深い信頼で結ばれたデュオが丁寧に紡ぐ最上のリートの世界。
文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
2017.2/19(日)14:00 トッパンホール
問:オーパス・ワン042-313-3213
http://opus-one.jp/
他公演
2/18(土)豊田市コンサートホール(0565-35-8200)