アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

ショスタコの次はグラズノフ!

アレクサンドル・ラザレフ ©浦野俊之
アレクサンドル・ラザレフ ©浦野俊之
 2008年の首席指揮者就任以来、厳しいリハーサルによって日本フィルの演奏レベルをぐんと引き上げたアレクサンドル・ラザレフ。この秋からは首席指揮者をピエタリ・インキネンに譲り、自らは桂冠指揮者兼芸術顧問に移る。より厚みのある体制で次の飛躍に臨もうというわけだ。
 リハーサルが徹底していると言っても、コワオモテではない。温かく磊落な人柄は、コンサートに足を運べばすぐに伝わってくる。ロシア音楽そのもののようなマエストロなのだ。就任以来、数多くのロシア音楽を取り上げてきたが、とりわけプロコフィエフの交響曲連続上演の後を次いで始まった『ラザレフが刻むロシアの魂』シリーズは、ラフマニノフ、スクリャービン、ショスタコーヴィチといった20世紀の大家への理解を深めてくれた。
 この秋よりスタートするシリーズ第4弾はグラズノフだ。まだまだ日本では知られていない作曲家だが、そのオーケストレーションは色彩感にあふれ、メロディー・メーカーとしても大変な才能の持ち主。先だってもラザレフと日本フィルは伸び伸びと明るいバレエ音楽「四季」を聴かせてくれたが、作風は素直で変に屈折せず、人気がないのが不思議なくらい。今回はドイツ風に重々しく始まり、にぎやかに終わる交響曲第5番だ。
 プログラム前半は、これまた『魂』第3シリーズで取り組んできたショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。こちらはグラズノフとは正反対の深刻な音楽だが、実はグラズノフとショスタコーヴィチは師弟関係にある。ここらへんの対比の妙も楽しみたい。ソロは現在ウィーンで学び、今後さらなる活躍が期待される若手・郷古廉だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

第685回 東京定期演奏会 ラザレフが刻むロシアの魂 Season Ⅳ グラズノフ1
11/25(金)19:00、11/26(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp