2つの宝が融合した、記念イヤーの贈り物
踊りにフルートはよく似合う─思わずそう感じてしまうのが、山形由美のデビュー30周年記念CD『Eternally〜永遠のジゼル』(イマジンベストコレクション)。これは、少女時代バレエに勤しみ、今も「フルートとバレエは大きな宝」と語る彼女の、双方に寄せる思いが融合した素敵なアルバムだ。
そして山形は今秋、30周年ツアーを行い、パリや東京など各地で収録曲を披露する(東京公演の共演はCDと同じくピアノの菅野潤)。プログラムは、彼女が特に愛する「ジゼル」をはじめ、リュリ、グラナドス、バルトーク、チャイコフスキー等のバレエや踊りにまつわる、チャーミングで哀感も漂う佳品たち。委嘱作の加藤昌則「フルートとピアノのためのカプリス〜旅する笛〜」も、日本の笛や祭りをイメージした興味深い1曲だ。
山形は長きにわたって幅広い層に愛されてきた。それは、彼女でしか表現し得ない“親密な気品”が、皆の心を魅了するからであろう。今回は、30年の年輪と現在の心象を映した演奏を、ぜひライヴで味わいたい。慈しむような情感がこもったその温かな音楽は、きっと我々を幸せな気持ちにさせてくれる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
11/25(金)19:00 浜離宮朝日ホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp